著者
舘 かほる
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.78-97, 2021-07-25 (Released:2021-08-25)
参考文献数
28

本稿の目的は、日本の人類学において最初期に写真を使用した人類学者、鳥居龍蔵によるアイヌの写真表象の特性を明らかにすることである。本稿で扱う対象は、鳥居が1899年に行った調査で撮影した千島アイヌの写真である。これまでの、鳥居の写真によるアイヌ表象に対する解釈は、帝国主義を示すものであるとする批判的解釈と、被写体に対する配慮を強調する肯定的解釈に二極化していた。そこで筆者は、鳥居の写真の詳細な意味を明らかにするために、資料の分析を行った。鳥居による人類学の成果物を調査すると、1903年に出版された書籍『千島アイヌ』の写真図版で、特徴的な掲載方法が見つかった。人類学調査のために撮影された写真が、肖像写真に使用される様式に縁取られて掲載されていたのである。肖像写真には抑圧と称賛というふたつの機能があることは、写真研究者のアラン・セクーラが「身体とアーカイヴ」で明らかにした通りである。セクーラの理論を参照するならば、この写真図版は、抑圧的機能を備えた写真が、称賛的機能を持つ縁に囲まれている状態なのである。この写真図版で示される、被写体への両義的な態度は、社会学者の小熊英二が「有色の帝国」と表した、日本の帝国主義における植民地支配のあり方を強く反映している。本稿の結論は、この写真資料が表す抑圧と称賛の両義性こそが、鳥居の写真におけるアイヌ表象のひとつの側面であるということである。

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