著者
安田 雅俊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.492, 2004 (Released:2004-07-30)

赤外線センサーを利用したカメラトラップ法は,ある地域の哺乳類の多様性や個体数を調べる際の簡便で優れた調査手法であり,近年多用されているが,日本の山野で適用する場合の標準手法は未だ確立されていない.本研究では,野生哺乳類のモニタリング調査の標準手法を確立するために考慮が必要な諸条件(調査の時期や期間,使用するカメラの台数等)と解析法について,筑波山での事例をもとに検討した.2000-2003年の3年間に,茨城県筑波山山麓の森林内の固定した5つの観察地点において,生落花生を餌として年4回のべ200カメラ日の調査を行い,中大型哺乳類9種の写真を412枚得た.「ある地域の対象種をある確率で撮影するために必要な調査努力量」と定義される“最小調査努力量”という概念を提唱し,何台のカメラをどのくらいの期間仕掛ければ,対象地域の哺乳類の多様性を調べ上げることができるかをブーツストラップ法を用いて解析した.タヌキ,イノシシ,ウサギ,ハクビシン,アナグマといった主要な5種を対象とした場合,94%の確率で,最小調査努力量は40カメラ日と推定された.得られた結果を総合すると,日本の落葉広葉樹林においては,5台のカメラで4日間,すなわち20カメラ日の調査を晩春から晩夏に2回反復することが推奨される.以上の結論は,一つの調査地における事例から得られたものであり,日本全国に適用可能な標準手法を確立するためには,同様の調査を多地点で行うことが必要である.また,既存のデータを同一の方法で解析することも有益であるため,既にカメラトラップで調査を行っている方々には,本研究の解析方法を開示するとともに,解析結果の共有化を呼び掛けたい.本報告の詳細はMammal Study 29(1)に掲載予定である

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https://t.co/MNnEfZ0VK1 日本の落葉広葉樹林においては,5台のカメラで4日間,すなわち20カメラ日の調査を晩春から晩夏に2回反復することが推奨されるか… カメラの台数増やしたいな…

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