著者
上田 浩一 安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.151-157, 2016 (Released:2017-02-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1

九州の西に位置する長崎県の五島列島における,絶滅種カワウソLutra lutraの過去の分布を明らかにするために,公立図書館等における文献調査と年配の地域住民への聞き取り調査を行った.カワウソに関する9件の文献資料と8例の証言から,かつて五島列島にカワウソが広く分布したことが強く示唆された.本地域におけるカワウソの生息記録は,文献では1950年代まで,目撃情報では1981年まであった.本地域個体群の絶滅には,かつての乱獲と1928年の禁猟以降の密猟が大きく寄与したと考えられるが,生息地の消失も付加的に影響した可能性がある.今後,さらなる調査によって,本地域におけるカワウソの記録が蓄積されるとともに,写真や毛皮といった物的証拠が発見されることを期待する.
著者
安田 雅俊 坂田 拓司
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.287-296, 2011 (Released:2012-01-21)
参考文献数
80
被引用文献数
5

九州において絶滅のおそれのあるヤマネGlirulus japonicusについて,過去の生息記録に基づき,分布や生態の特徴と保全上の課題を検討した.62件の文献資料からヤマネの生息記録54件が得られ,8ヵ所の主要な生息地が認められた.九州のヤマネは,低標高の照葉樹林から高標高の落葉広葉樹林まで垂直的に幅広く生息すること,少なくとも秋から冬にかけて3–5頭を出産すること,11月下旬から4月下旬に冬眠することが明らかとなった.英彦山地,九重山,多良岳および肝属山地の個体群については,地理的にも遺伝的にも孤立している可能性が高く,保全には特に配慮する必要がある.県境に位置する孤立個体群の保全には隣県が連携して取り組むことが不可欠である.
著者
関 伸一 安田 雅俊
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.S1-S8, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
19

瀬戸内海の南縁にあたる豊予海峡の高島(大分県)でオオミズナギドリ Calonectris leucomelas の新たな集団繁殖地を発見した.内部に土砂の堆積がなく過去数年以内に利用された可能性のある巣穴の確認数は122個,既知の巣穴の分布範囲の面積は0.28haであった.北側には瀬戸内海唯一の繁殖地である宇和島,南側の豊後水道には沖黒島,小地島がいずれもほぼ等距離に位置しており,高島はこの地域の小規模繁殖地の存続と遺伝子流動において重要となるかもしれない.繁殖地に設置した自動撮影カメラでは巣穴に出入りするオオミズナギドリとともに,捕食者となる可能性のあるクマネズミ属の種 Rattus sp.,特定外来生物であるクリハラリス Callosciurus erythraeus,ハシブトガラス Corvus macrorhynchos が撮影された.高島のクリハラリスは継続的な捕獲により個体数が減少傾向にあるが,その影響でクリハラリスと食物の一部が競合するクマネズミ属の種が増加する可能性があり,今後の経過をモニタリングする必要があるだろう.
著者
安田 雅俊 松尾 公則
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.35-41, 2015 (Released:2015-07-04)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

九州北部の照葉樹林(長崎県多良山系,標高400 m)において,巣箱と自動撮影カメラを組み合わせた方法(巣箱自動撮影法)で,ヤマネGlirulus japonicusの活動周期を2011年10月から2014年3月までの30ヶ月間連続的に調査した.ヤマネは冬の一時期(12月中旬あるいは1月上旬から2月下旬までの2ヶ月以上3ヶ月未満)を除き,ほぼ通年,高頻度に撮影された.回帰式を用いて最寄りの気象観測所の旬平均気温から調査地の旬平均気温を推定することで,冬眠時期の気温を推定することができた.巣箱自動撮影法は,本種の冬眠の研究だけでなく,野生個体の日周活動の研究にも利用できる有効なツールであることが示された.
著者
安田 雅俊 船越 公威 南 尚志
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.21-25, 2015 (Released:2015-07-04)
参考文献数
15
被引用文献数
2

2013年12月から2014年2月まで,鹿児島県大隅半島南部の低標高の照葉樹林において,巣箱と自動撮影カメラを組み合わせた方法でヤマネGlirulus japonicusの活動性を調査したところ,冬期に20日以上の間をあけずに,しばしば撮影された.調査地における調査期間中の日平均気温の平均値は9.0°C(範囲:3.5~16.8°C)で,ヤマネが冬眠入りする目安とされる気温(8.8°C)と同程度であった.九州南部のヤマネは冬眠期間が短いか,冬期の暖かい時期に一部の個体が冬眠から覚醒して活動している可能性がある.また,暖冬などの気候条件によっては冬眠しない個体の出現が予想される.
著者
上田 浩一 安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.151-157, 2016

<p>九州の西に位置する長崎県の五島列島における,絶滅種カワウソ<i>Lutra lutra</i>の過去の分布を明らかにするために,公立図書館等における文献調査と年配の地域住民への聞き取り調査を行った.カワウソに関する9件の文献資料と8例の証言から,かつて五島列島にカワウソが広く分布したことが強く示唆された.本地域におけるカワウソの生息記録は,文献では1950年代まで,目撃情報では1981年まであった.本地域個体群の絶滅には,かつての乱獲と1928年の禁猟以降の密猟が大きく寄与したと考えられるが,生息地の消失も付加的に影響した可能性がある.今後,さらなる調査によって,本地域におけるカワウソの記録が蓄積されるとともに,写真や毛皮といった物的証拠が発見されることを期待する.</p>
著者
安田 雅俊 田村 典子 関 伸一 押田 龍夫 上田 明良
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

大分県の無人島(高島)において特定外来生物クリハラリスの個体群を対象として①いかに個体数を減少させるか、②いかに残存個体を発見しするか、③外来リス根絶後の生態系の回復過程をいかに把握するかを検討した。異なる防除オプション(生捕ワナ、捕殺ワナ、化学的防除)の組合せが迅速な根絶達成に必要と結論した。クリハラリスの化学的防除の試験を行い、生態系への負の影響を最小化する技術を開発した。ベイト法は低密度個体群において有効と結論した。防除開始直後の高島の生物群集(鳥類と昆虫類)に関するデータを得ることができた。これは高島におけるクリハラリス地域個体群の根絶後における生態系回復の理解において重要となる。
著者
安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.195-206, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
62
被引用文献数
4

九州において絶滅のおそれのある樹上性リス類(ニホンリス,ニホンモモンガ,およびムササビ)3種について,江戸時代中期以降の各種資料(論文や報告,鳥獣関係統計,毛皮取引の記録等)をとりまとめ,生息記録と利用の変遷,および現在おかれている状況を種ごとに記述した.また,国,九州本土7県,および日本哺乳類学会のレッドデータブックにおける3種の取り扱いを比較した.九州において,(1)ニホンリスは狩猟による捕獲等の記録はあるものの,過去100年間以上,標本を伴った確実な生息情報がないこと,(2)ニホンモモンガは過去50年間の生息情報が極めて限られていること,および(3)近年ムササビの分布域が縮小してきていることが明らかとなった.これらの種の分布域の縮小に関連してきたと推察される要因として,戦後の拡大造林による天然林ハビタットの減少,樹洞や餌資源の減少,先史時代から続いてきた狩猟圧等を列挙した.今後の課題は,第一にニホンリスとニホンモモンガの残された個体群の探索であり,第二にそれぞれの種の分布域の縮小に,どの要因が,いつ,どれほど寄与したのかを解明することである.九州の絶滅のおそれのある樹上性リス類の保全は,県単位で対処できる課題ではなく,地方レベルで対処すべき課題であり,九州地方版のレッドデータブックの作成が考慮されるべきである.信頼性のある生息情報の収集に努め,残された個体群ごとに適切な保全策を講じるために,国の行政機関による強いイニシアチブの発揮が望まれる.
著者
安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.195-206, 2007-12-30
参考文献数
62
被引用文献数
5

九州において絶滅のおそれのある樹上性リス類(ニホンリス,ニホンモモンガ,およびムササビ)3種について,江戸時代中期以降の各種資料(論文や報告,鳥獣関係統計,毛皮取引の記録等)をとりまとめ,生息記録と利用の変遷,および現在おかれている状況を種ごとに記述した.また,国,九州本土7県,および日本哺乳類学会のレッドデータブックにおける3種の取り扱いを比較した.九州において,(1)ニホンリスは狩猟による捕獲等の記録はあるものの,過去100年間以上,標本を伴った確実な生息情報がないこと,(2)ニホンモモンガは過去50年間の生息情報が極めて限られていること,および(3)近年ムササビの分布域が縮小してきていることが明らかとなった.これらの種の分布域の縮小に関連してきたと推察される要因として,戦後の拡大造林による天然林ハビタットの減少,樹洞や餌資源の減少,先史時代から続いてきた狩猟圧等を列挙した.今後の課題は,第一にニホンリスとニホンモモンガの残された個体群の探索であり,第二にそれぞれの種の分布域の縮小に,どの要因が,いつ,どれほど寄与したのかを解明することである.九州の絶滅のおそれのある樹上性リス類の保全は,県単位で対処できる課題ではなく,地方レベルで対処すべき課題であり,九州地方版のレッドデータブックの作成が考慮されるべきである.信頼性のある生息情報の収集に努め,残された個体群ごとに適切な保全策を講じるために,国の行政機関による強いイニシアチブの発揮が望まれる.<br>
著者
安田 雅俊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.492, 2004 (Released:2004-07-30)

赤外線センサーを利用したカメラトラップ法は,ある地域の哺乳類の多様性や個体数を調べる際の簡便で優れた調査手法であり,近年多用されているが,日本の山野で適用する場合の標準手法は未だ確立されていない.本研究では,野生哺乳類のモニタリング調査の標準手法を確立するために考慮が必要な諸条件(調査の時期や期間,使用するカメラの台数等)と解析法について,筑波山での事例をもとに検討した.2000-2003年の3年間に,茨城県筑波山山麓の森林内の固定した5つの観察地点において,生落花生を餌として年4回のべ200カメラ日の調査を行い,中大型哺乳類9種の写真を412枚得た.「ある地域の対象種をある確率で撮影するために必要な調査努力量」と定義される“最小調査努力量”という概念を提唱し,何台のカメラをどのくらいの期間仕掛ければ,対象地域の哺乳類の多様性を調べ上げることができるかをブーツストラップ法を用いて解析した.タヌキ,イノシシ,ウサギ,ハクビシン,アナグマといった主要な5種を対象とした場合,94%の確率で,最小調査努力量は40カメラ日と推定された.得られた結果を総合すると,日本の落葉広葉樹林においては,5台のカメラで4日間,すなわち20カメラ日の調査を晩春から晩夏に2回反復することが推奨される.以上の結論は,一つの調査地における事例から得られたものであり,日本全国に適用可能な標準手法を確立するためには,同様の調査を多地点で行うことが必要である.また,既存のデータを同一の方法で解析することも有益であるため,既にカメラトラップで調査を行っている方々には,本研究の解析方法を開示するとともに,解析結果の共有化を呼び掛けたい.本報告の詳細はMammal Study 29(1)に掲載予定である
著者
安田 雅俊 堤 将太
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.161-187, 2022 (Released:2022-08-10)
参考文献数
159

A literature survey on the use of lutai (fetal Sika deer, Cervus nippon) yielded 128 references in the literature (108 from Japan and 20 from mainland China and Taiwan). Lutai was first used as a medicine among some highly-ranked samurai in the early 17th century. In the early 19th century (late Edo period), lutai was believed to be an efficacious remedy for women with sickness following childbirth. In the late 19th century and the early 20th century (from the end of the Edo period to the Meiji-Taisho period), medical practices were widely published and the use of lutai became popular among ordinary Japanese people. In the mid-19th century (the early Meiji period), at least 27,000–40,000 pieces of lutai were produced in Hokkaido, mostly for domestic and international trade. Some lutai was also produced in Honshu, Shikoku, and Kyushu. The commercial value of lutai varied considerably among regions and over time. It is probable that targeted hunting of pregnant female deer prevailed in regions where lutai had a high commercial value, which could be a cause of the severe population decline of Sika deer in Japan during the Meiji-Taisho period.
著者
川田 伸一郎 安田 雅俊 篠原 明男 Lim Boo Liat
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.65-74, 2008
被引用文献数
1

半島マレーシア産のモグラはEuroscaptor属の遠隔地個体群として1940年に記載された.原記載以来,本地域個体群はヒマラヤやタイ国に生息する種の亜種とされるのが一般的で,独立種としての扱いはなされていない.近年発表された形態,核型,分子系統の成果は,半島マレーシア産のモグラが明らかにEuroscaptor属の他種とは異なることを示唆している.本研究では,半島マレーシア産のモグラに関する詳細な形態的記載を行った.半島マレーシアにおいてモグラの主な生息地とされる茶畑の由来に関しても考察を加え,本地域個体群がEuroscaptor属の他種とは明確に異なる形態的特徴を持つ,固有種として位置づけられることを示した.
著者
安田 雅俊 川田 伸一郎
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.175-182, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
48
被引用文献数
2

本稿は下稲葉・安田(2018)で詳しく述べられた日本の研究者による独自の哺乳類学における先駆者の一人,岸田久吉に関する情報を補完するものである.彼は1930年代に台湾の生物地理を理解する上でモグラの重要性に注目した.その成果として,彼は台湾にタイワンモグラMogera insularisおよび1ないし2種の独立種の存在を認め,さらにこれらを独立属として位置づけたが,これらの学名に関する記載をしなかった.これらは裸名(nomen nudum)となるが,近年の研究では台湾に複数種のモグラ(2007年に記載されたヤマジモグラMogera kanoanaおよびその遺伝的変異集団)が分布することが示唆されている.つまり岸田の台湾産モグラ類に関する予言は,あながち間違っていなかったと考えられる.
著者
関 伸一 安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.33-40, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
48

クリハラリスCallosciurus erythraeusは日本各地で野生化し分布を拡大しつつある外来の樹上性リスであり,鳥類の巣で卵や雛を捕食して繁殖を阻害すると推測されているが,捕食行動の観察事例は稀である.そこで,クリハラリスが高密度に生息する大分県の高島において,鳥類の巣を模した擬巣にウズラCoturnix japonicaの卵を入れて森林内に設置し,自動撮影カメラで捕食者を特定することによりクリハラリスによる卵捕食の頻度を調査した.3週間後には25個の擬巣のうち24個(96%)で卵が消失し,いずれも最初に巣の入り口で撮影されたのはクリハラリスであったことから,全てクリハラリスが卵を捕食したものと推定された.9個の巣では捕食者となる可能性のあるハシブトガラスCorvus macrorhynchosおよびクマネズミRattus rattusも撮影されていたが,いずれもクリハラリスが複数回訪れた後での記録であった.クリハラリスが擬巣の入り口に最初に接触した日時を捕食の時期とすると,卵が捕食されるまでの平均日数は2.7日で,1日あたりの擬巣の生残確率は0.72と低く,クリハラリスが鳥類の繁殖に対して影響の大きい捕食者となっている可能性が示された.狭い行動圏内で複数個体が重複して食物の探索をするクリハラリスの生息地の利用様式によって,その他の捕食者による場合と比べて短期間に高い確率で擬巣が発見され,捕食されるのかもしれない.
著者
安田 雅俊 関 伸一 亘 悠哉 齋藤 和彦 山田 文雄 小高 信彦
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.227-234, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

現在沖縄島北部に局所的に分布する絶滅危惧種オキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象として,過去の生息記録等を収集し,分布の変遷を検討した.本種は,有史以前には沖縄島の全域と伊江島に分布した可能性がある.1939年の発見時には,少なくとも現在の名護市北部から国頭村にいたる沖縄島北部に広く分布した.外来の食肉類の糞中にオキナワトゲネズミの体組織(刺毛等)が見つかる割合は,1970年代後半には75–80%であったが,1990年代後半までに大きく低下し,2016年1月の本調査では0%であった.トゲネズミの生息地面積は,有史以前から現在までに99.6%,種の発見時点から現在までに98.4%縮小したと見積もられた.
著者
川田 伸一郎 安田 雅俊
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.257-264, 2012 (Released:2013-02-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

The Hainan mole, Mogera hainana Thomas, 1910, was recorded to be collected by “a native employed by Mr. Alan Owston” in the original description of the species. We noticed the specimen tag of the holotype was printed and handwritten in Japanese characters. The same tag was attached to another specimen of this species deposited at the Forestory and Forest Products Research Institute (Tsukuba, Ibaraki, Japan). Those specimens were both collected in November, 1906; therefore, the Hainan mole was collected by a Japanese person who visited Hainan Island in this period. We searched for the same form of specimen tags, and found many among bird specimens from Hainan Island at the Yamashina Ornithological Institute (Abiko, Chiba, Japan). In this period, Zensaku Katsumata collected the birds in Hainan Isl. and sent them to the Lord of Lionel Walter Rothschild in England. We estimated the type series of the Hainan mole was also collected by Z. Katsumata, who was a collector employed by a merchant A. Owston, and he sent it to L. W. Rothschild in UK. L. W. Rothschild communicated with the Natural History Museum and his name was dedicated to 18 mammalian species by researchers of this museum. It is possible to consider that Rothschild’s mammalian collection was presented to the Natural History Museum and examined by mammal researchers. Although Zensaku Katsumata was an obscure person in mammalogy, we discuss his contribution to the dawn of natural history in Japan.
著者
安田 雅俊 栗原 智昭 緒方 俊輔
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.41-45, 2012 (Released:2012-07-18)
参考文献数
11

九州において絶滅のおそれのある国の特別天然記念物カモシカCapricornis crispusの生息記録を宮崎県北部の高千穂町において収集し,1996–2011年にかけての目撃,自動撮影,死体,個体保護からなる生息記録13件を得た.それらの生息記録と地形との関係をみたところ,カモシカは標高400 m以上に分布し,最大傾斜角32度以上の急峻な地形を好むことが示唆された.カモシカ九州個体群の保全のためには,さらに広域に生息記録を収集するとともに,植生等のその他の重要な環境要素を加えた,九州における本種の潜在的なハビタットをより正確に判定するモデルを開発することが望まれる.