- 著者
-
佐久間 淳
- 出版者
- 一般社団法人 電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.4, pp.348-364, 2014-04-02 (Released:2014-04-02)
- 参考文献数
- 83
近年の技術的進歩によって,ゲノムシーケンシングコストが急速に低下した.このことは大規模なゲノム疫学研究の発展をもたらし,遺伝子の個人差といえる一塩基多形(SNP)と生活習慣病を含む多様な疾患の関係が明らかになりつつある. またこれらの成果によって, 個人ゲノムに基づく疾患リスク予測も可能になりつつある. 個人ゲノムは予防医療を中心とした様々な個別化医療への応用の基礎となる情報であるが, 「究極の個人情報」とも呼ばれ,その扱いには慎重を要する. このため, ゲノム疫学や個別化医療においてゲノム情報を安全に活用するためのプライバシー保護技術の構築が望まれている.本稿ではゲノムデータの共有や公開に伴う多様なリスクと脅威について概観を示す. また, そのプライバシー上のリスクを減ずる主要なプライバシー保護技術として, 秘密計算(セキュアマルチパーティー計算)と差分プライバシーを紹介し,そのゲノム疫学と個別化医療への適用例について解説する.