著者
平井 圭介 加藤 浩紀 西川 久夫 行弘 信仁 西山 啓次 宮本 政臣
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.1, pp.51-60, 2010 (Released:2010-07-09)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

既存の睡眠薬は,GABAA受容体に作用して睡眠を誘発する.GABAA受容体は,脳幹毛様体,辺縁系,海馬,小脳,脊髄,大脳皮質辺縁系など広範囲に存在し,種々の神経伝達物質を含有する神経に対して, Cl−イオンの細胞内流入を介して抑制的に作用する.そのため,睡眠誘発作用は示すものの,その睡眠は自然睡眠とは異なり,筋弛緩作用,前向性健忘,反跳性不眠,依存性などの種々の有害作用を惹起する.これに対してラメルテオン(Ramelteon,TAK-375,商品名Rozerem®)は,主に視床下部視交叉上核に存在するメラトニン受容体(MT1/MT2受容体)にアゴニストとして作用してcAMP産生系を抑制し,サルおよびネコで強力な睡眠誘発作用を示した.その睡眠パターンは自然睡眠に極めて近いものであった.また,既存薬で見られる学習記憶障害,運動障害,依存性などは見られなかった.ラメルテオンは入眠障害を特徴とする睡眠障害患者における臨床試験において,入眠までの時間を短縮するとともに総睡眠時間を増やした.ヒトにおいても記憶障害や運動障害などの有害作用は極めて少なく,依存性も見られず,反復投与においても耐性や反跳性不眠も認められなかった.ラメルテオンは,ヒトの睡眠覚醒サイクルを司る視交叉上核に作用する新規作用機序を有し,副作用が少なく生理的な睡眠をもたらす不眠症治療薬として期待される.

言及状況

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@pootaroh89314 患者さんの状態やDrのプロブレムにもよりますが、症状によっては頓服使用だと効果は実感しにくいでしょうね 一過性の不眠に対する治療効果はあると評価されているのでそれを狙ってかもしれません また調べて追記があれば報告するかもです リンク共有しておきます↓ https://t.co/T2XXefAXeY https://t.co/Q0z21p5oTG
発達障害のある小児に対象が限定されているとは言えメラトニンが医薬品として処方できるようになったので、メラトニン受容体作動薬であるラメルテオンとの違いを改めて勉強してみた。 https://t.co/lSGF1VLZCW →
メラトニン受容体作動薬(ロゼレム; ラメルテオン)不眠症の治療薬。睡眠リズム障害にも有効かも。HANS研究グループ(HPVワクチン副反応)は次に紹介する学会抄録で不眠症の治療薬として記載がある。なお、具体的な症例研究論文はまだ見つけていない。 https://t.co/bMnTe7Zowr
4 4 https://t.co/phmp4m7Xcr

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