著者
中川 隆之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.4, pp.184-187, 2013 (Released:2013-04-10)
参考文献数
19

感音難聴に代表される内耳障害は,主な身体障害のひとつであるが,多くは不可逆性であり,根本的治療法の開発が強く望まれている.本稿では,内耳蝸牛の感覚上皮に焦点を当て,障害進行段階に応じた治療法開発の取り組みについて紹介する.音響刺激を神経信号に変換する役割を担う蝸牛感覚上皮の有毛細胞が障害されているが,未だ細胞死に至っていない段階では,インスリン様成長因子1などの薬物局所投与の難聴治療への可能性が呈示され,臨床試験も行われている.有毛細胞が喪失しているが,感覚上皮を構成するもうひとつの細胞である支持細胞が温存されている段階では,ノッチ情報伝達系制御による支持細胞から有毛細胞への分化転換による有毛細胞再生による聴覚再生が研究されている.さらに,障害が進行し,再生のソースが蝸牛内に残されていない段階では,工学的な蝸牛感覚上皮再生ともいえる人工感覚上皮開発が行われている.今後の研究発展により,革新的難聴治療が臨床的に実現することが望まれる.

言及状況

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内耳再生へのストラテジー〜内耳障害の病態に応じた治療法の開発戦略,中川隆之(京都大学)2013 https://t.co/ByaBS8xeWW

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