著者
堀 哲郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.209-218, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
57

従来,脳と免疫系は各々それ自体,独立した自律系として捉えられ,別個に研究されてきた.しかし,近年,生体に社会心理的なストレスを与えたり,脳の特定部位を破壊,刺激すると,免疫機能が影響を受けることや,免疫反応の条件付けが可能であることなどから,脳の活動変化が免疫系に影響を及ぼすことが示された.また,感染,炎症に伴い誘起される神経系と内分泌系の反応が免疫系からの情報に依存することも明らかになってきた.そのような知見を背景に,脳と免疫系とはお互いに影響し合うという「脳・免疫系連関」は一つの研究領域として1970年代に確立し,爾来急速に発展し,現在に至っている.この現象が成立する背景には,脳と免疫系が情報伝達物質(サイトカイン,ホルモン,神経・内分泌ペプチド,古典的神経伝達物質)と受容体を共通に持っているという事実がある.脳は,免疫臓器を支配する自律神経系や内分泌系とを操作して免疫系の働きを修飾している.一方,免疫系も上記の情報伝達物質を産生し,体液性および神経性に神経および内分泌系へ信号を送り,多彩な急性期反応を発現させ,それらの反応が逆に免疫系の働きに影響を与えるという複雑な干渉が両者の間に存在する.かくして脳と免疫系とは共同して個体全体として生体防衛に当たることが明白になってきた.本稿では,脳・免疫系連関において主要な働きをする情報伝達物質であるサイトカインの中枢神経作用とそれを媒介する神経伝達物質について,インターロイキン-1の働きを中心に抄述する.

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