著者
池田 安隆 岡田 真介 田力 正好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.5, pp.294-312, 2012-05-15 (Released:2012-10-05)
参考文献数
100
被引用文献数
10 22 5

東北日本弧においては,測地学的観測で検出された水平短縮歪み速度が地質学的に観測される歪み速度よりおよそ一桁大きい.同様の不一致は垂直変動速度に関しても存在する;太平洋岸で急速な沈降が観測される一方で,第四紀後期の旧汀線高度は緩慢な隆起を示す.これは現在急速に蓄積している地殻歪みの大部分が弾性歪みであり,プレート境界の固着部分がすべることで解消されるということを示している.しかし,過去100年間に起こったMw 708級の海溝型地震は歪み解放に寄与していない.したがって,プレート境界の固着面全体がすべる巨大歪み解放イベントが存在するはずであり,2011年東北地方太平洋沖地震はこのような固着解放イベントであると考えられる.東北日本では幅広い固着領域の浅部のみが地震時にすべり,割れ残った深部固着域で余効すべりが起こるらしい.このような深部固着は,他の超巨大地震発生帯には存在しない可能性が高い.日本海溝に沈み込んでいるプレートの年齢は極めて古く従って低温であるから,このように深い固着域が存在するのは熱的な原因によると考えられる.

言及状況

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本震後に続いてゆっくりとした断層すべりのことを余効変動(余効すべり)といいます。 ここで仮説を立ててみましょう。 リソスフェア=本震すべり+余効すべり 2011年東北地方太平洋沖地震のM9クラスの超巨大地震における本震滑り(深さ約~50km)に続く非地震性すべりはアセノスフェアの領域(深さ約100km~)ではなく、リソスフェアの領域(深さ約~100km)だけで起こっているように見えま ...

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昨日の公開講演会で、この論文に関するお話を伺ってきました。地震の前に分かるといいのですが…ともかく為になるお話でした。 >  東北日本島弧−海溝系における長期的歪み蓄積過程と超巨大歪み解放イベント... http://t.co/pyeXjFXmSD

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