- 著者
-
新井 宏嘉
- 出版者
- 一般社団法人 日本地質学会
- 雑誌
- 地質学雑誌 (ISSN:00167630)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, no.9, pp.575-590, 2002-09-15 (Released:2008-04-11)
- 参考文献数
- 85
- 被引用文献数
-
5
5
関東山地北縁部,跡倉ナップを構成する上部白亜系跡倉層には共役雁行脈が発達する.これを用い,跡倉層中の古応力場を解析した.雁行脈はその形態的特徴により,個々の脈が相似褶曲の形態を呈し,尖端が他の機械的異方面に連続しないもの(Aタイプ)と,Aタイプに比べて規模が大きく,個々の脈がシェブロン褶曲の形態を呈し,尖端が節理に連続するもの(Bタイプ)の2つに区分される.共役雁行脈はAタイプにのみ認められる.Aタイプは主に石英および緑泥石からなり,脆性-延性剪断帯で形成された.Bタイプは方解石および石英を主とし,節理形成後の開口で形成された.共役雁行脈から求めた古応力場は,最大圧縮主応力軸:北西-南東~北北東-南南西方向,水平,中間圧縮主応力軸:ほぼ鉛直,最小圧縮主応力軸:北東-南西~西北西-東南東方向,水平である.これらは跡倉層の重複褶曲構造のうち,正立褶曲群形成時後期に形成された.