- 著者
-
高島 裕美
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, pp.37-54, 2014 (Released:2016-07-02)
- 参考文献数
- 13
制度上のジェンダー平等が実現しているといわれる教職であるが,実はその
職場にはさまざまなジェンダー・バイアスがある。こうした実態が生成・維持
される仕組みは,これまで必ずしも明らかになってきてはいない。
そこで本稿では,教職の職務配置の論理に着目し,ジェンダー・バイアスが
生成・維持される仕組みを,教員集団に焦点化することで明らかにすることを
課題とした。
分析の結果,第一に,ジェンダー・バイアスの実態が,小学校では担任する
学年に,中学校では担当する教科に確認できた。しかし第二に,教員たちは自
身の職場を「ジェンダー・バイアスのない職場」と評価していることが明らか
になった。第三に,こうした実態と認識のずれを生じさせるのは,職場のジェ
ンダー・バイアスは,家庭責任を持った女性教員に対する「配慮」の結果とし
て理解されていたことに由来するということが明らかになった。そして第四に,
この「配慮」が女性の担当する職務を男性の担当する職務より劣位に置かれる
ことを見えにくくしていることが明らかになった。しかし同時に,昨今の学校
組織改革や教職の多忙化の影響によって,教員同士による「配慮」自体が,す
でに困難になりつつあるということも示唆された。