著者
伊藤 幹二
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-48, 2020 (Released:2021-01-31)
参考文献数
20

昨今目にする水害の現場には,例外なく散乱・滞積する土砂と雑草バイオマスごみが残されている.雑草と豪雨災害の一連の事象との関係について,因果関係をはっきりさせ問題点をしっかり把握・共有し,雑草管理の視点から何が提言できるのかが求められる.そこで,雑草が豪雨被害の発生要因にどのように関わっているのかを検証するために,雑草ウオッチャーによる情報収集を行った.回答総数152の53%が豪雨前に目にする雑草の繁茂状況に関するものであった.河床や堤防には必ずと言ってもよいほどに雑草の繁茂がみられ,川幅の2/3や3/4を雑草が占めている光景から.用水・排水・放水路の内側や両サイド,とくにグレーチングで守られた排水溝を埋め尽くす雑草など,それらの機能が大きく損なわれている様子がうかがわれた. 次いで回答総数の32%が豪雨後の雑草ごみに関わるものであった.ここでは掃流雑草木による橋桁崩壊や護岸工作物崩落の助長,雑草ごみによる排水・放水機能の阻害,土砂・雑草バイオマスごみ量と処理費用,雑草ごみの散乱と景観の悪化などが指摘された.この他鉄道,道路,太陽光発電施設では,斜面崩壊,土砂崩れなど斜面雑草が関わる被害が寄せられた.これらの雑草害は,河川管理,用水・排水路管理,斜面植生管理に関わることであるが,雑草問題は1)河川敷・道路敷・鉄道敷における雑草の異常繁茂,2)豪雨による土砂と雑草繁殖体の流出・拡散,3)雑草バイオマスの増加と雑草管理の欠如,4)雑草害の軽視による豪雨被害の助長,5)豪雨後の土砂・雑草ゴミの清掃に整理することができる.以上の結果から,今後,生活圏のインフラ維持の現場で豪雨災害と雑草害の負のスパイラル拡大を止めるには,雑草対策を優先して取り組む必要性が明らかになった.

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