著者
須山 聡
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.3-20, 2018 (Released:2019-04-01)
参考文献数
13

本論は,奄美大島における世界自然遺産登録に向けたさまざまな取り組みをたどることにより,奄美大島の人びとにとって世界自然遺産が持つ意味を,地域間の関係性に即して明らかにすることを目的とする。奄美の世界自然遺産登録運動は,地域の活性化,観光の振興,奄振の延長・継続を具体的な狙いとしていたが,その本質は内地に奄美の存在を認めさせることであった。世界遺産の理念とは相容れない地域的なエゴイズムが,運動を進める推進力となった。そのため,顕著な普遍的価値という,世界遺産の理念は奄美では正当に理解されることなく,「言葉の受容」にとどまった。その背景には,国家を上回る権威と結びつくことにより,日本本土を奄美に振り向かせるという奄美の戦略があった。世界自然遺産は,日本に奄美を認めさせるための道具として機能した。

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それでも,奄美の承認欲求は満たされる。切り離され,周縁に置き去りにされてきた奄美が,世界自然遺産登録によって日本の一部として認められるのである。日本本土に取り込まれ,「内地」 という言葉が無効化することが,最終的な奄美の願望なのであるから。 全文☟ https://t.co/AVpUNoSVwz
奄美大島における世界自然遺産登録に対する取り組みとその地域的含意 https://t.co/UgE87QZPDW

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