著者
やまだ ようこ
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.93-114, 2005 (Released:2020-07-05)

本研究では,イギリスの墓地で観察した墓碑銘の事例を基に,「家族ライフストーリーが語られる場所としての墓地」という新しい見方を提示する。第1 には,家族ライフストーリーが語られる「記憶の場所」としての墓地という観点から,死者が亡くなって100 年以上たつ古い墓碑を観察し,ハワーズ,ヨーク,オックスフォードの19世紀末の家族墓碑銘を分析した。第2 には,生者と死者のコミュニケーションが生々しく進行している「喪の場所」としての墓地という観点から,現代ヨークの市営共同墓地を観察し,特に親や子が死者に語りかける言語的・非言語的メッセージに注目して分析した。本研究の新しい視点は,従来のライフストーリー研究や生涯発達研究の視点とは異なり,「個人の人生」中心の視点から解き放ち,家族関係,世代間連関,生者と死者の関係などの関係性に焦点をあてて「家族ライフストーリー」を見ること,また人生や生の物語(ライフストーリー)を「死の物語」の側から見ることである。墓地の家族ライフストーリーには,少なくとも3 つの心理学的機能があると考えられた。1)個人の人生が逆方向に死を基点として「死」の側から凝縮して語られる,2)愛する親子という家族物語が繰り返し連鎖的に親近性のある世代によって語られる,3)生者から死者へ,そして過去世代から未来世代へ,世代や生死を超えた長い時間軸のコミュニケーションが行われる。

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