- 著者
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北川 一夫
- 出版者
- 日本脳神経外科コングレス
- 雑誌
- 脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.12, pp.901-908, 2008-12-20 (Released:2017-06-02)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
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これまで原因不明とされてきた脳梗塞の中で,大動脈粥状硬化病変からの塞栓症である大動脈原性脳塞栓症,卵円孔開存などの右左シャントに起因する奇異性脳塞栓症が,経食道心エコー検査を用いて正確に診断されるようになってきた.大動脈弓部に内膜中膜厚4mm以上,または可動性プラーク,潰瘍形成を認めるプラークは塞栓源として認識されている.再発予防にはスタチン製剤と抗血小板薬または抗凝固薬の使用が推奨される.卵円孔開存は一般健常人でも約20%観察されるため,奇異性脳塞栓症の診断には右左シャントの証明だけでは十分でない.下肢深部静脈血栓症や肺塞栓症の存在を確認する必要がある.下肢静脈エコー検査は,深部静脈血栓,特にヒラメ静脈血栓症の検出に有用である.卵円孔開存を伴う脳卒中症例の再発予防には,深部静脈血栓症あるいは全身の凝固元進状態を合併していればワルファリンが,これらの合併がない場合は抗血小板薬が推奨される.