著者
泉 桂子
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.20-28, 2010-11-01 (Released:2017-08-28)
参考文献数
50

1兆円超の累積債務を抱える全国の林業(造林)公社について,既往の研究文献により以下2点を明らかにした。第1に公社債務問題は研究史上,1980年から言及され,1985年には公社ビジネスモデルそのものの欠陥が指摘されたが,債務問題に対しては対処療法が示されたに過ぎなかった。1992年以降公社研究は下火となり,公社解散が現実となるが,解散によってその債務問題が解決したとはいえない。研究史上農林漁業金融公庫の貸し手責任が明言されたことは成果であった。第2に,設立当時,公社には1.拡大造林の推進,2.地域振興,3.森林所有と森林経営の分離,4.農林漁業金融公庫の資金活用の4つの役割が期待された。これらの役割は1970年代前半〜1990年半ばに終了した。役割の終了にもかかわらず債務問題を抱えなおも公社が存続し得たのは,公社形態を取ったことによる信用膨張,事業と経営の分離,無責任体制に一因がある。

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