著者
田附 きつ 塚中 和恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.93-101, 1985-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12

ヤマノイモ3品種群, 4種類の長薯, いちょう薯, つくね薯(大和薯)およびつくね薯(市販・静岡産)を用いた饅頭の皮を調製した.上記のほかに, 対照としてつくね薯(市販・静岡産)を専門店で調製させた.各種ヤマノイモは卸し金法で卸し液を調製し, あらかじめ回転粘度計で粘度測定した.饅頭の皮はレオロメーターで硬さおよび付着性を測定し, 10℃, 108時間保存後の変化も測定した.また膨化率を測定した.最後に順位法により官能検査を実施した.これらから次の結果が得られた.1) 3品種群とも卸し液流動特性は降伏値をもつ擬塑性であった.粘度の大きさはつくね薯, いちょう薯および長薯の順で, つくね薯はワイセンベルグ効果を示した.2) 饅頭の皮のテクスチャーにおいて, 硬さはAがもっともやわらかく, 次いでE, D, BおよびCの順であった.付着性はAが非常に大きく, B~Eはほぼ同程度であった.3) 長薯使用の饅頭の皮は108時間の貯蔵後硬さが著増し, 付着性が激減して保存性がよくなかった.この饅頭の皮は官能検査ではやわらかで, 弾力性がよく, また経済性の点からも有利であるにもかかわらず市販に使用されていないのはこの保存性の不良によると考えられる.4) 饅頭の皮の膨化率はDがもっとも高く, 次いでC, B, EおよびAの順で, これは粘度の大きさの順と一致した.このうちDはワイセンベルグ効果を示したが, 従来饅頭の皮にDの品種, すなわちつくね薯がもっぱら用いられてきたことの一端が解明されたと考える.5) 饅頭の皮の官能検査は気泡, ふくれ, やわらかさ, 弾力性, しなやかさ, ねばっこさおよびおいしさの7 項目について順位法で行い, その結果をKramerの検定およびStudentのt検定にかけた.両検定は大筋では一致するが, 後者のほうがより細密な結果がえられた.試料Eは“気泡”の出方が有意に少なかったのは割れ止め処理をしてあったためである. “ふくれ” では試料Dが有意に膨脹の度合が大きく膨化率の結果と一致した.試料Bは“ばね状”は大きいが, “こわさ”があり, “ねばり”が少なく総評的に悪かった.

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編集者: Kiyoweap
2020-07-13 06:37:03 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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