著者
高野 賢一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.12, pp.1481-1484, 2019-12-20 (Released:2020-01-09)
参考文献数
8
被引用文献数
2

近年, IoT (Internet of Things), 人工知能 (AI) などを中心とする第4次産業革命ともいわれる時代に突入し, 通信機器や通信技術の進歩も目覚ましい. 医療分野でもさまざまな IT (Information Technology) が導入されているが, そのひとつとして遠隔医療が注目されている. 遠隔医療によって, 患者のアクセスビリティの向上, 地域による医療資源差の解消, 勤労世代の労働時間確保などの諸問題を解決できる可能性がある手段の1つとして期待されている. 2018年4月には, 診療報酬改訂によってオンライン診療料・オンライン医学管理料・オンライン在宅管理料が新設され, 同時に遠隔モニタリング加算も認められた. 現時点ではオンライン診療料が算定できる対象疾患が限られている点や, オンライン診療を行うために必要な情報通信システムを提供する民間企業への使用料などを考慮すると, 医療機関側にとってはむしろ費用面で負担となることも少なくない. 一方で, 患者志向医療であることから, すでに実地臨床ではアレルギー性鼻炎, めまい症, 睡眠時無呼吸症候群などの患者を対象に導入されつつある. 当科では, 人工内耳装用者を対象に遠隔マッピング, 遠隔言語訓練を開始している. 患者は地元の中核病院またはクリニックを受診し, 大学病院とオンラインで結びマップ調整を行っている. 言語訓練では自宅と結び, インターネットを介して訓練を行っている. 広大な北海道では専門医療機関へのアクセスがしばしば問題となり, この遠隔医療によって患者の高い満足度が得られている. 新たな医療インフラとなることが予想される遠隔医療は, 現時点では法整備や診療報酬などの課題が残されているものの, 耳鼻咽喉科領域も含めて, 患者志向医療として今後ますます発展していくものと思われる.

言及状況

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補聴器や人工内耳のマッピング調整は遠隔でできると便利だよな、特殊性が高いから調整できる人が都市部に限られがちだし。特に広大な北海道だと。さすがに小児難聴の調整は遠隔難しそうだけど海外やってんのかな。 耳鼻咽喉科における遠隔医療の可能性(日耳鼻2019;122:1481) https://t.co/VQAczdWkWc

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