- 著者
-
佐々木 勉
- 出版者
- 総務省情報通信政策研究所
- 雑誌
- 情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.167-198, 2021-07-21 (Released:2021-12-10)
- 参考文献数
- 68
現代の情報通信経済は、GAFAやBATHといったオンライン・プラットフォームにより牽引されている。そうしたオンライン・プラットフォームについて政府がどのように関与していくかは、長年の課題だった。2020年12月、欧州連合は、電気通信分野における支配的事業者規制を範としたデジタル市場法案を発表した。本稿は、欧州連合のアプローチを取り上げ、米国のアプローチを補足する。まず欧州連合のデジタル市場法案に至る背景として、これまでの競争法に基づく反トラスト調査の経緯、そしてオンライン・プラットフォーム市場で起きている問題点、さらにオンライン・プラットフォーム市場の経済的特性を整理する。そして同法案の内容について、支配的事業者に相当する「ゲートキーパー」とは何か、どのような基準で選定し、どのように規制するか、またその規制のためにどのような執行ツールを設けているのか、そして義務等の不履行に対してどのような罰則を科すのかを探る。欧州連合のデジタル市場法案発表から半年たった2021年6月、米国も下院司法委員会の議論を踏まえ、議員立法によるオンライン・プラットフォーム規制5法案が発表された。欧州連合の法案の特徴を明確化するため、本稿後半では、米国の法案を取り上げて対比させる。欧州連合でも米国でも、まだ法案段階である。すなわち、今回取り上げる法律内容は最終的な条文ではない。しかし、本稿は、こうしたオンライン・プラットフォーム分野における新しい規制アプローチが提案され、新たな時代に踏み込もうとしている現状を明らかにすることで、我が国の政策作り、研究あるいは企業戦略に資すことを目指す。