著者
竹上 未紗
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-21, 2015 (Released:2015-04-16)
参考文献数
11

循環器疾患は短期的な死亡率が比較的高い疾患であるため、評価指標として生命予後の重要性が他の疾患に比べて際立っており、QOL研究の発展は遅れた。循環器領域における初期のQOL研究としては、降圧剤の影響に関するものがある。治療の結果、医師側が全員、患者は改善したと答えたのに対し、改善したと答えた患者は10%未満であった。医師が患者の血圧コントロールに関心があるのに対し、患者は活力や活動の低下などを問題にしていることが明らかになり、Patient-Reported Outcomesの測定の重要性が示された。近年では治療技術の向上に伴い治療の主な目的が長期予後の改善だけでなく、QOLを改善することにあるとの認識が広まり、循環器疾患領域の種々のガイドラインにおいてもQOL評価が取り入れられつつある。しかしながら、未だに日本でQOL評価が十分になされていない疾患も多い。成人先天性心疾患もその一つである。本稿では、QOLの概念を改めて整理し、循環器疾患領域におけるQOLを用いた臨床研究を紹介するとともに、その一例として国立循環器病研究センターの小児循環器科と共同で実施している成人先天性心疾患患者とその親を対象としたQOL調査を報告する。この調査より通常の診療ではケアの対象となっていない親のQOLが低下していることが示され、QOL評価の必要性が再認識された。

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