- 著者
-
中村 潤二
- 出版者
- Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
- 雑誌
- 物理療法科学 (ISSN:21889805)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.11-18, 2022 (Released:2022-08-20)
- 参考文献数
- 48
直流前庭電気刺激(Galvanic vestibular stimulation: GVS)は両側の乳様突起に貼付した電極から微弱な直流電流を通電することで,経皮的に前庭器官を刺激するものである.GVSは,姿勢制御や視空間認知に影響を与えるため,中枢神経系の調整的介入が可能であると考えられている.我々は脳卒中後の半側空間無視やPusher現象,パーキンソン病における姿勢異常に対するGVSの介入を実施し,それらの影響に関して報告してきた.特に,Pusher現象や姿勢異常に対する介入は乏しく,GVSはこれらの難渋する障害に対する介入となる可能性がある.また,GVSを応用することで,姿勢制御や筋緊張調節に重要な神経機構である前庭脊髄路の機能が評価可能であるとされ,前庭脊髄路の障害やGVSの影響について検討できる.本稿では,脳卒中後に生じるPusher現象や半側空間無視,パーキンソン病における姿勢異常といった障害に焦点を当て,GVSの基礎,GVSを用いた前庭脊髄路の機能評価の可能性や介入といった臨床応用のための取り組みを提示し,新たなニューロモデュレーションとしてのGVSの可能性について示したい.