著者
西田 裕紀子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.433-443, 2000-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
22 34

本研究の目的は, 幅広い年代 (25~65歳) の成人女性の多様なライフスタイルについて, 複数の構成要素からなる心理的well-beingとの関連から検討することであった。まず研究1では, 成人期全般に適用でき, 理論的背景が確認されているRyffの概念に基づき, 人格的成長, 人生における目的, 自律性, 自己受容, 環境制御力, 積極的な他者関係の6次元を有する心理的well-being尺度が作成され, 6次元の信頼性・妥当性が確認された。また, 年代によって心理的well-beingの様相が異なり, 次元によっては発達的に変化することが示された。次に研究2では, ライフスタイル要因と心理的well-being各次元との関連について検討した。その主な結果は以下の通りである。(1) 年代と就労の有無, 社会活動参加度を独立変数, 心理的well-being各次元を従属変数とする分散分析を行った結果, 就労, 社会活動という家庭外での役割は, 成人女性の心理的well-beingとそれぞれ異なった形で関連していることが示された。特にこれまで家庭外役割としてほとんど焦点が当てられてこなかった社会活動が, 就労とは異なった形で心理的well-beingと強く関連していたことから, 成人女性の発達的特徴を考える際に, 就労以外の様々な活動にも目を向けることの必要性が示唆された。(2) 年代別に, 妻, 母親, 就労者, 活動者の各役割達成感と心理的well-being各次元との偏相関係数を検討した結果, 長期にわたる成人期においては, 各年代に応じた役割を獲得し, それによる達成感を得ることが心理的well-beingと強く関連することが明らかになった。この結果から, それぞれの役割の質的側面が成人女性のライフサイクルの中で異なった重要性を持つことが示唆された。

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