- 著者
-
鈴木 亮
- 出版者
- The Ichthyological Society of Japan
- 雑誌
- 魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1-3, pp.50-58, 1955-09-30 (Released:2010-06-28)
- 参考文献数
- 19
(1) ドジヨウとフナ又はキンギヨの交配を行い、交雑卵の死亡率を調べ、孵化した存魚の内部及び外部の形態について観察を行つた。(2) 科間交雑卵は、正常卵に比べて嚢胚期と孵化期に著しい死亡率を示し、更に孵化した仔魚は、孵化後3~20日ですべて斃死した。(3) 多くの交雑仔魚は尾部、腹部、心臓、前腎系統、脊索、血管などが発生障害を受けた。(4) 前腎輸管や、前腎室が発生障害を受けた交雑仔魚はedemaになつたが、その障害を受けなかつたものはedemaにはならなかつた。このことからedemaの成因は前腎機能に関係しているものと思われる。(5) 交雑仔魚に於ては、前腎輸管の異常肥大をしているものがあり、これは一側部の前腎系統が肛門の附近でつぶれているか、或はそれが欠如している場合に限つてみられた。しかし、前腎室がつぶれていた場合には、このような肥大は見られなかつた。(6) edemaになつた仔魚は、孵化後3~5日ですべて死亡したが、edemaにならなかつたものは、孵化後10~20日間も生存することができた。このことから、edemaは交雑仔魚の一つの死因となつているものと考えられる。(7) 交雑仔魚は正常仔魚に比べて、心臓の衰弱、游泳及び索餌不能といつたようなことが観察された。従つて交雑仔魚の死因は単にedemaのみではなく、それ以外にも幾つかのことが関与しているものと思われる。