著者
佐久間 泰司
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.33-38, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
8

症例の概要:54歳女性.抜髄後の難治性疼痛に対し,歯科医師から「歯を抜かないといけないような悪いところが無い」と言われたにもかかわらず納得せずに抜歯を希望した.最終的に他院で抜歯を受けたが,非歯原性歯痛と思われた.考察:非歯原性歯痛は歯痛を生じうる疾患であるが,執拗に抜歯を希望されることが少なくない.患者が抜歯を希望するのは,歯痛の原因が歯にあると患者自身が思ったからである.なぜそう思うのであろうか.「歯が痛い.歯が悪いと思う.」と患者が言った場合を考える.「歯が痛い」は前提(症状)であり,「歯が悪い」は結論(診断)である.症状と診断の間に「歯が痛いのは歯が悪いからだ」「歯が痛い時は歯が悪いことが多い」「歯が悪いと歯が痛くなる」などという患者の理由づけが省略されている.この3つの理由づけは同じように見えるが,演繹,帰納,アブダクションに相当する.それぞれの違いに応じて患者への説明が変わる.結論:患者(一般市民)は妥当性のある推論を使って説明したとしても,理由づけが経験や知識から得られる考えと一致しないと受け入れない.

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大阪歯科大学の佐久間先生から、ご論考をいただきました。なんと私の本も参照してくださっています。この論考の最後の部分は、とてもとても強く心に残ります。私達がやるべきことはまだまだあります。理工系、医学系の方と本当に連携しなくてはいけませんね。https://t.co/BTTCxXhn1Y

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