著者
水野 道代
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.15-24, 2003 (Released:2017-02-27)
参考文献数
14

要 旨本研究は,長期療養を続ける造血器がん患者が希望を維持していく際に用いる状況解釈のプロセスとその方法を帰納的に明らかにしたものである.大学病院に入院中の造血器がん患者7名に,3ヵ月間で延べ41回の面接調査を行い,その逐語録の内容をエスノグラフィーの手法を用いて分析した.造血器がん患者が長期にわたる療養生活のなかで希望を維持していくプロセスには,1)先のことが考えられない段階,2)退院後の生活を望む段階,3)現在の状態に慣れる段階,4)ただ良くなりたい段階という4つの段階があった.各段階は,時間の経過というよりも,患者が①具体的目標や②死や③治癒の可能性をどのようにとらえているか,あるいは,患者の④病気と付き合っていく方法がどのような状況にあるかによって,その特徴を示すことができた.つまり各段階にはその段階に応じた状況解釈の特徴があり,彼らの希望はその解釈の方法に大きな影響を受けていた.そして“治療を終えないとどうにもならない”という気付きが各段階から段階への移行を左右した.また,彼らは長期療養生活を続ける過程で,病気と付き合っていく方法を身につけていた.具体的な目標をあえて持とうとせず,死を身近に感じながらも,医療の可能性を深く信じていたのもその一つであった.このような患者の態度を看護師が支持することも,彼らが身に付けた対処能力を侵さないようにするためには必要であることが本研究結果から示唆された.

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