著者
飯塚 麻紀 水野 道代
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.245-254, 2014-10-20 (Released:2014-11-13)
参考文献数
23
被引用文献数
1

目的:日本語版“Managing Uncertainty in Illness Scale-Family Member form:MUIS-FM”(MUIS-FM-J)の信頼性および妥当性を検討する.方法:脳神経疾患で入院中の患者の家族204名を対象に調査を行った.調査用紙は,MUIS-FM-J,新版STAI状態–特性不安尺度(STAI),対象者の基本属性と家族の病気に関する認識で構成した.併存的妥当性はMUIS-FM-JとSTAIの状態不安との相関関係により確認した.構成概念妥当性は,主にMUIS-FM-Jの因子構造により確認し,対象者の病気に関する認識の違いによるMUIS-FM-Jの得点の差を算出して弁別性を確認した.結果:MUIS-FM-Jは原版同様の1因子構造で,Cronbachのα係数は0.91であった.MUIS-FM-J得点は,STAIの特性不安得点との相関係数がr=0.34,状態不安得点との相関係数がr=0.66と正の相関を示した.MUIS-FM-Jは,疾患の種類,発症後の日数,意識レベルや生活動作,現状の予測などにおいて有意な得点の差を認めた.結論:内的整合性および併存的妥当性,構成概念妥当性の結果から,本尺度は信頼性と妥当性を有すると判断した.
著者
水野 道代
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.15-24, 2003 (Released:2017-02-27)
参考文献数
14

要 旨本研究は,長期療養を続ける造血器がん患者が希望を維持していく際に用いる状況解釈のプロセスとその方法を帰納的に明らかにしたものである.大学病院に入院中の造血器がん患者7名に,3ヵ月間で延べ41回の面接調査を行い,その逐語録の内容をエスノグラフィーの手法を用いて分析した.造血器がん患者が長期にわたる療養生活のなかで希望を維持していくプロセスには,1)先のことが考えられない段階,2)退院後の生活を望む段階,3)現在の状態に慣れる段階,4)ただ良くなりたい段階という4つの段階があった.各段階は,時間の経過というよりも,患者が①具体的目標や②死や③治癒の可能性をどのようにとらえているか,あるいは,患者の④病気と付き合っていく方法がどのような状況にあるかによって,その特徴を示すことができた.つまり各段階にはその段階に応じた状況解釈の特徴があり,彼らの希望はその解釈の方法に大きな影響を受けていた.そして“治療を終えないとどうにもならない”という気付きが各段階から段階への移行を左右した.また,彼らは長期療養生活を続ける過程で,病気と付き合っていく方法を身につけていた.具体的な目標をあえて持とうとせず,死を身近に感じながらも,医療の可能性を深く信じていたのもその一つであった.このような患者の態度を看護師が支持することも,彼らが身に付けた対処能力を侵さないようにするためには必要であることが本研究結果から示唆された.