著者
森津 千尋
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
pp.30-2-01, (Released:2022-07-28)
参考文献数
32

オリンピックは、1980年代からグローバルメディアのコンテンツまたは企業のマーケティング・ツールとしての側面を強化し、「商業主義」と批判を受けながらも大会を継続させるため、メディアやビジネス環境に適応しながら合理的に変化してきた。そのため2020年東京大会の国内スポンサーも、日本国内の事情に合わせて、各カテゴリーで複数企業がスポンサーとなる「東京方式」が導入され、新聞カテゴリーでは複数の新聞社がスポンサー契約をしていた。 本稿では、まず近年におけるオリンピックとメディア、スポンサーの関係の変化、さらに2020年東京大会で浮上した問題点を整理した。そして新聞社がオリンピックスポンサーになることの問題を考察するため、今回スポンサーとなった新聞とそうでない新聞の社説を対象にテキストマイニング分析を行い、その論点や言説の違いについて検討した。 その結果、スポンサー/非スポンサー新聞社説では、オリンピックについて扱う話題は同じだが、その論点と語られ方に違いがあることがわかった。非スポンサー新聞では「感染」や「復興」の問題がオリンピック開催と直接関連するものとして語られていたが、スポンサー新聞ではそれらの問題はオリンピックとは切り離され、大会外部の出来事として位置づけられていた。 またスポンサー新聞か否かに関わらず、大会スポンサーについての議論は各紙とも消極的であり、特に新聞のスポンサーシップについては、社説では言及されず、一般記事において外部からの問題指摘として数回掲載されるにとどまった。新聞社のスポンサーシップに関する報道は、世論(世間の空気)に追随するかたちであり、特にスポンサー新聞では、言論機関としての主体性がより曖昧であったといえる。

言及状況

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2020 年オリンピック東京大会におけるスポンサーシップと新聞報道 https://t.co/k9GblSKGBo スポンサー/非スポンサー新聞社説では、オリンピックについて扱う話題は同じだが、その論点と語られ方に違いがあることがわかった。
オリンピックの理想は社会的には、その価値は一定評価できる。ここにコミットすることの意義は社会的に評価できる。あまりにも商業主義に偏ってしまうと、こういった便益があまりにも低くなり、企業にとって、業績の優先度が高くなる。 <参考> https://t.co/x3s0tq15X6

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