著者
岩本 禎彦
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.541-548, 2015 (Released:2015-10-19)
参考文献数
15

要約:最近の遺伝子解析技術の爆発的進化は,臨床医学における遺伝子診断を,ますます身近なものにすると期待されている.遺伝子診断の中でも生殖細胞系列の遺伝子診断は,①将来の発症予見性,②生涯変化しないこと,③非発症保因者を診断できること,④血縁者,人種,地域共同体に共有されている可能性があること,という,他の医療情報にはない特徴を持つために,最も倫理的な配慮が必要である.とりわけ保因者診断,発症前診断,出生前診断には,遺伝カウンセリングが必須である.また,次世代シークエンサーを用いて全ゲノムやエクソーム解析を行った場合には,本当に診断したかった症候に関連した遺伝子異常だけではなく,予期せぬ遺伝子に配列異常が見出された場合にどう伝えるべきかが問題になっている.遺伝性疾患の根本的治療として,従来,ウイルスベクターを用いた治療が行われているが,受精卵や胚を治療の対象とすることは禁じられている.最近,中国で受精卵のゲノム編集が実施されたことが発表され,物議を醸している.ヒトの生殖細胞のゲノム編集についての議論を,日本でも開始するべきと考える.その際,人類遺伝学を正しく理解しておくことが重要なことである.

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