著者
三島 郁
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-12, 2019-11-30 (Released:2020-11-30)
参考文献数
28

19世紀におけるドイツ語圏での「ゲネラルバス」という用語は、バロック期の「通奏低音」としてではなく、和声理論にも使われていた。その延長上にフーゴ・リーマン Hugo Riemann (1849–1919) は理論・実践書『ゲネラルバス奏法の手引き(ピアノの和声練習)Anleitung zum Generalbass=Spielen (Harmonie=Übungen am Klavier)』(1889–1917)を出版した。彼はそこでバロック作品の通奏低音についての説明や実践課題も多く載せながら、さまざまな記号を駆使して和声の機能面を強調する。 本稿では、この『手引き』の内容を、リーマンのゲネラルバスの使用法や和声理論教育の方法の観点から分析し、彼のゲネラルバスの捉えかたを考察し、明らかにした。リーマンのゲネラルバス理論は、和音の縦の構成音を示すバロックの通奏低音の理論と、和音の横の流れを示す19世紀の和声理論という、一見逆のシステムをもつようにみえる二つの理論に対して、それらを鍵盤上で実践する指の動きで結びつけることによって整合性をもたせようとしたものである。そのゲネラルバス実践には、機能和声という条件の下でも、指感覚を重んじながら「正しい」進行をすることが求められている。

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