- 著者
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奥 忍
- 出版者
- 日本音楽表現学会
- 雑誌
- 音楽表現学 (ISSN:13489038)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.23-32, 2003-11-30 (Released:2020-05-25)
- 参考文献数
- 28
本稿は「拍子を分割する単位拍としての間」の研究の一部分をなしている。これまでの研究から,聞き手が感じる拍感には,構音や音高など,さまざまな要因が働いていることが明らかになっている。そこで,今回は「時間長」に焦点を当て,旋律的要素よりもリズム的要素が優位であり,しかも表現法として様式化されている和歌の朗詠を取り上げた。朗詠と律読,朗読との相違点をリズムの視点から検討した上で,百人一首の朗詠の音声分析を通して,各句と単位拍,モーラの時間長配分によるリズム操作を明らかにする。検証された5仮説の中でとりわけ注目されるのは以下の3 点である。・特定の語や句についての強調や,語句境界よりも全体の時間的な流れが優勢であること。・単位拍,モーラは等拍/等時でなく,流動的であること。・様式化された朗詠の中に演者個人の表現様式が存在すること。この実験で明らかになったことばの流動的なリズム操作,モーラの時間長配分は,他の邦楽ジャンルにも共通している可能性がある。