著者
朝蔭 直樹
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.189-193, 2013-04-30 (Released:2014-11-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

われわれは腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術をTANKO-Totally extraperitoneal repair (TEP) で行っている. その進入経路となる従来Retzius腔あるいは膀胱前腔 (以下Retzius腔) といわれているcavityに関しては諸説あるが, 必ずしも正しく理解されていないと考えるため今回検証を試みた. Retzius腔が腹膜前筋膜浅葉・深葉間の腹膜前腔 (Bogros腔) であるかのような見解があるが, Retzius腔は横筋筋膜と浅葉間に広がる疎なcavityであり, 腹膜前腔とは浅葉を境界 (boundary surface) とした非交通性の異なったcavityである. また膀胱は内胚葉由来なので腹膜前筋膜には被われていないという見解があるが, 内胚葉由来なのは膀胱上皮であって, 膀胱という「腔」は中胚葉由来の腎筋膜から連続した腹膜前筋膜である膀胱筋膜に包埋されていると理解するべきである.

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