著者
Prabir K. PATRA Edward J. DLUGOKENCKY James W. ELKINS Geoff S. DUTTON 遠嶋 康徳 笹川 基樹 伊藤 昭彦 Ray F. WEISS Manfredi MANIZZA Paul B. KRUMMEL Ronald G. PRINN Simon O'DOHERTY Daniele BIANCHI Cynthia NEVISON Efisio SOLAZZO Haeyoung LEE Sangwon JOO Eric A. KORT Suman MAITY 滝川 雅之
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.361-386, 2022 (Released:2022-04-13)
参考文献数
65
被引用文献数
8

大気中の一酸化二窒素(N2O)は地球温暖化および成層圏オゾン減少に影響を及ぼしており、発生源ごとの放出量推定の精緻化は気候変動の政策決定において非常に重要である。本研究ではまず大気大循環モデルMIROC4を基にした化学輸送モデル(ACTM)を用いたコントロール実験を行い、大気中N2O濃度の時空間変動について現場観測等を用いた検証を行なった。本計算に際しては各種起源(土壌起源、農業起源、その他人為起源、海洋起源)について複数のインベントリを用い、合計5種類の組み合わせで計算を行なった。その結果、N2Oの大気中寿命は年々変動の影響を含め、127.6±4.0年と推定された。次に、世界各地の42地点における1997年から2019年にかけての観測結果を用いて、世界を84分割した各地域におけるN2O放出量についてベイズ手法を用いた逆解法による推定を行なった。その結果、全球の陸域および海洋起源それぞれの放出量は2000年代には12.99±0.22 および 2.74±0.27 TgN yr-1、2010年代は14.30±0.20および 2.91±0.27 TgN yr-1と推定された。 地域別に見ると、南極海周辺での海洋起源放出量について既存インベントリが過大評価傾向にあることがわかった。一方熱帯域および中高緯度域の地表からの放出量についてはそれぞれ過少および過大評価傾向にあったと考えられ、別の観測の結果とも整合的であった。また全球の陸域および海洋起源放出量の時間変動についてはエルニーニョ・南方振動と強い相関が見られた。地域ごとの陸域起源放出量の2000年代と2010年代の間の変化量について調べたところ、北アメリカ、中央および熱帯アメリカおよび中央アフリカ、南、東および東南アジアで増加傾向が見られた。一方ヨーロッパでは減少する傾向が見られたが、これは化学工業に起因すると推定された。また15地域中3地域(東アジア、北アメリカおよび中央アフリカ)および南極海において、季節変化について今後の改良が必要なことが示唆された。陸域生態系モデル(VISIT)による推定放出量を用いた場合、観測から推定される1978年以降の増加速度をよく再現しているが、一方で窒素肥料の施肥から大気への放出にかかる変換時定数については改めて検討する必要があることが示唆された。

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New Online Release of JMSJ Vol. 100, No.2 (April 2022) Patra et al., 2022: Forward and inverse modelling of atmospheric nitrous oxide using MIROC4-atmospheric chemistry-transport model. J. Meteor. Soc. Japan, 100, 361-386. https://t.co/nTENvHphpB https://t.co/RwCv7IYPL4

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