著者
宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.493-500, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
21

本論は「風景の保護」に関わるイタリア共和国憲法の基本原則である第2条、第5条、第9条の制定時の議論を条文の間を結びつけて考察し、次の点を明らかにしている。1) 憲法第9条は、憲法議員マルケージとモーロによって起草された。風景とともに文化や芸術遺産を憲法で扱う必要性、国際的な価値と国家による保護の必要性を憲法議員たちが認識していたことが、議事録から理解できた。2) 憲法第2条は、個人の自由権と社会集団のコミュニティ権の二つの権利を統合するねらいがあった。3) 風景保護は、個人の自由権とコミュニティ権を両立させ、個人の財産が地域コミュニティで生かされ、社会的機能の形成に寄与するように、私有財産権を風景保護のために制限することを憲法裁判所の判決で認めている。4) 風景の保護について、地方分権も検討されたが、第9条に国家の役割を入れた経緯が明らかになった。5) 憲法第9条のビジョンは、2004年のウルバーニ法典により、文化的発展に風景保護を用いる考え方が法律化し、国家と州政府が協力するかたちで、コミュニティ権を守るべく、私権の制限を行う仕組みを整えたことが明らかになった。

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@myu_srsn リベラルアーツ教育に造詣深い家族。これこそが国家や人類の宝。 人文系研究は、高度な文化産業の源泉でもある。 写真一枚が億単位の地域産業基盤になることもある。(丸亀市の女子サッカー起源写真)儲け根性では辿り着けなかった筈。 イタリア憲法9条の規定は伊達ではない。 https://t.co/sxbxgXCNM5
@Francis_F_Koala 本当に景観って大切ですよね。イタリアの憲法9条には、国の風景、歴史的、芸術的遺産の保護が明記されているとのこと。国としての矜持を感じますし、GDPだけではない存在感の出し方を示唆していると思います。 https://t.co/qdh3GtUtMb

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