著者
瀧澤 透
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.399-406, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
19
被引用文献数
2

目的 統合失調症やうつ病など精神疾患は自殺の危険因子とされるが,自殺死亡の実態は十分に把握されていない。本研究は人口動態統計の自殺死亡について,死亡票の「死亡の原因」欄などにある精神疾患の記載状況を調査集計することで,自殺死亡における精神疾患の実態を明らかにすることを目的とする。方法 調査対象は平成20年人口動態統計の自殺死亡30,229人であり,方法は目的外使用による死亡票閲覧•転写入力と提供を受けたオンラインデータの分析より精神疾患の記載状況を検討した。なお,平成20年自殺死亡30,229人のうち確認できたものは29,799人(98.3%)であった。精神疾患については,死亡票の「死亡の原因」欄のほか,「外因死の追加事項」,「その他付言すべきことがら」の各欄に記載があった場合を有効とした。結果 なんらかの精神疾患の記載があった者は29,799人中2,964人であった。主な記載は次の通りであった。認知症55人(このうちアルツハイマー型認知症は13人),アルコール依存症•精神病116人,統合失調症550人,躁うつ病•双極性障害101人,うつ病1,913人,強迫性障害13人,適応障害22人,摂食障害14人,不眠症•睡眠障害49人,パーソナリティ障害24人,広汎性発達障害 6 人。なお,複数の診断がある者は125人いた。結論 平成20年警察統計では,統合失調症は1,368人,うつ病は6,490人であり,本研究と大きな違いがあった。近年,法医学では検死制度の在り方が提言されているが,公衆衛生学や精神医学の立場からも死因究明に対して提案していくことが必要であると思われた。

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死体検案書は「死因欄」に精神疾患が記載されることが極めて少ない。自殺は異状死であり病死扱いとならない。さらに、死体検案書は客観的な事実を記載することになっているため、病歴情報のない状況では精神科既往について記載できず、また伝聞情報にも安易に依存しない。 https://t.co/P5aEtaFTvD
"警察による自殺死亡原票は「通常の検視・見分又は捜査の結果判明した事項の範囲内において作成」されるため、家族からの聞き取り捜査なども反映される余地がある。原票の作成者は「検視又は見分を行った警察官」だが「死体の発見地を管轄する警察署の警察官」の場合もある" https://t.co/nal6X65vKF
"死体検案書は「死因欄」に精神疾患が記載されることが極めて少ない。自殺は異状死であり病死扱いとならない。さらに、死体検案書は客観的な事実を記載することになっているため、病歴情報のない状況では精神科既往について記載できず、また伝聞情報にも安易に依存しない。" https://t.co/nal6X65vKF
2008年の日本の自殺者3万人のうち、なんらかの精神疾患の記載が(人口動態調査死亡表)あった、者は2,964人で約10%。しかし警察の統計では20%。 https://t.co/HGyMdIBg4d https://t.co/JVcCcXgIvI
@lacucaracha @takutanaka にゃるほど。。 https://t.co/Clbmv74Swq https://t.co/MY3wrgNKBB
自殺者の死亡票から精神疾患を集計した論文があった https://t.co/fGCqrrVmpC 平成20年の自殺者30229人のうち、死亡票に何らかの精神疾患がみとめられたのは2964人。 うち、強迫性障害は13人。 ちなみにうつ病は1913人。 うつ病恐ろしいな

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