著者
宮川 雅充 濱島 淑恵
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.157-166, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
28

目的 日本においても,家族のケアを担っている子ども(ヤングケアラー)が相当数存在することが指摘されている。しかしながら,ケア役割の状況が彼らの生活満足感や健康に与える影響に関する調査研究はほとんど行われていない。本研究では,高校生を対象に,生活満足感および主観的健康感についてケア役割の状況との関連を分析し,ケア役割がヤングケアラーの生活満足感や主観的健康感に与える影響について検討した。方法 大阪府の府立高校(10校)の生徒6,160人を対象に質問紙調査を行った。調査では,家族の状況とともに,彼らの担うケア役割の状況を尋ねた。また,生活満足感に関する質問(1問),主観的健康感(全体的な健康感)に関する質問(1問)を尋ねた。さらに,各種自覚症状に関する質問(7問)を尋ね,主成分分析を適用し主観的健康感を評価した。生活満足感および主観的健康感について,ケア役割の状況との関連を,交絡因子の影響を調整して分析した。結果 5,246人(85.2%)から有効回答を得た。本稿では,分析で使用する変数に欠損値がなかった4,509人を分析対象とした。そのうち47人(1.0%)が幼いきょうだい(障がいや疾病等はない)のケアを担っていた(ヤングケアラーA)。また,233人(5.2%)が,障がいや疾病等のある家族のケアを担っていた(ヤングケアラーB)。残りの4,229人(93.8%)は,家族のケアを行っていなかった(対照群)。生活満足感に関するロジスティック回帰分析では,ケア役割の状況との間に有意な関連が認められた(P<0.001)。ヤングケアラーAとBの不満足感のオッズ比は,対照群と比較した場合,それぞれ2.742(P<0.001),1.546(P=0.003)であり,いずれも有意に高かった。全体的な健康感については,ケア役割の状況との間に有意な関連は認められなかった(P=0.109)が,各種自覚症状の主成分得点に関する重回帰分析では,ケア役割の状況との間に有意な関連が認められた(P<0.001)。ヤングケアラーAとBの不健康感の係数は,対照群と比較した場合,それぞれ0.362(P=0.012),0.330(P<0.001)であり,いずれも有意に高かった。結論 ケア役割の状況が過度になった場合,ヤングケアラーの生活満足感や主観的健康感に悪影響が生じることが示唆された。

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