著者
斎藤 徹 小池 早苗 小澤 照史 臼井 洋介
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.52-59, 2013-04-30 (Released:2020-04-30)
参考文献数
38

【目的】統合失調症の嚥下障害者における誤嚥性肺炎の発症と関連する因子を解析することを目的とした.【対象】2008 年4 月から2012 年3 月の間に,当院歯科口腔外科を受診した統合失調症の嚥下障害者232 例を対象とし,誤嚥性肺炎発症の要因を後方視的に検討した.男性:126 例,女性:106 例であり,平均年齢は70.1 歳(標準偏差:11.8 歳)であった.歯科口腔外科初診時に投与されていた種々の抗精神病薬の投与量を,chlorpromazine(CP)の力価に換算したCP 換算量の平均は458 mg/ 日(標準偏差:633 mg)であった.日常生活自立度(ADL)の評価は,「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」に準じた.【結果】歯科口腔外科初診時より過去3 カ月以内に誤嚥性肺炎を発症した症例は80 例(34.5%)であり,他の152症例(65.5%)は同期間に誤嚥性肺炎の発症はなかった.誤嚥性肺炎の発症症例では,非発症症例と比較してFunctional Oral Intake Scale(FOIS)(p=1.6×10-12),血清albumin(ALB)(p=9.0×10-6)およびADL(p=5.7×10-7)が有意に低下していたが,年齢(p=0.111)および肥満係数(BMI)(p=0.509)に有意差は認められなかった.また,誤嚥性肺炎の発症および非発症症例の間で,男女の比率(p=0.069)および口腔顔面dyskinesia の発症率(p=0.679)に有意差は認められなかった.CP 換算量は,誤嚥性肺炎の発症症例では非発症症例と比較して有意(p=0.001)に低かった.【結論】統合失調症の嚥下障害者では,嚥下機能の低下のみならずADL や栄養状態の低下が誤嚥性肺炎の発症と密接に関連していた.

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