著者
斎藤 徹 石井 芝恵 小池 早苗 小澤 照史 川田 陽子
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.274-281, 2014-12-31 (Released:2020-04-30)
参考文献数
46

【目的】統合失調症の嚥下障害者における誤嚥発症の要因を解析することを目的とした.【対象と方法】対象症例は2009 年11 月から2014 年1 月の間に当院歯科口腔外科を受診した統合失調症の嚥下障害者225 例とし,後方視的研究を行った.対象症例は男性122 例,女性103 例であり,平均年齢は65.5 歳(標準偏差12.5 歳)であった.これらの症例における水の誤嚥の有無を嚥下内視鏡検査(Videoendoscopic examination of swallowing,VE)により評価した.VE 施行時に投与されていた種々の抗精神病薬の投与量を,クロルプロマジン(CP)の力価に換算したCP換算量の平均は501 mg /日(標準偏差584 mg)であった.本研究では,水の誤嚥の有無と,年齢,性別,日常生活の自立の可否,屋内生活の自立の可否,座位の可否,肥満係数(BMI),CP 換算量,口腔顔面ジスキネジア発症の有無および咽頭反射の有無との関連を,単変量解析およびロジスティック回帰分析(変数減少法)を用いた多変量解析にて検索した.【結果】単変量解析では,水の誤嚥と,BMI(p=0.022),日常生活の自立の可否(p=0.036)および咽頭反射の有無(p=0.004)との間に有意な関連を認めた.しかし,性別,年齢,屋内生活の自立の可否,座位の可否および口腔顔面ジスキネジア発症の有無と,水の誤嚥との間には有意な関連は認められなかった.上記の9 要因と水の誤嚥との関連を,ロジスティック回帰分析で解析した結果,誤嚥の有無は咽頭反射の有無と有意(p=0.015)に関連していたが,他の8 要因とは有意な関連は認められなかった.【結論】ロジスティック回帰分析により,統合失調症の嚥下障害者では,咽頭反射の有無が水の誤嚥の有無と有意に関連することが認められた.

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