著者
田代 志門
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.21-30, 2016-01-31 (Released:2017-08-30)
参考文献数
23

本稿では、現代的な死にゆく過程の成立をある医師の個人史と重ねて整理し、それが以下の3段階から形成されていることを明らかにした。まず、病院での死が当たり前となり、死にゆく過程が医療の管理下に置かれるようになること。次にその過程で「一分一秒でも長く生かす」ことの正しさが疑われるような局面が表面化すること。最後にこうした難しい局面においては、本人が死の近いことを知ったうえで、主体的に「生き方」を選択するという規範が支持されるようになること。これにより、「自分の死が近いことを認識している人間が残された生をどう生きるべきか思い悩む」という実存的問題が「発見」され、それが医療スタッフの経験する困難にも質的変化をもたらした。以上の変化を受けて、医療社会学には専門家による「生き方の道徳化」を批判的に検討しつつも、現代的な死にゆく人役割の困難さの内実に迫る研究に取り組むことが求められている。

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