著者
仲 周平
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.367-372, 2015-06-25 (Released:2016-10-31)
参考文献数
23

近年,アルコール非摂取者において生じる過剰栄養摂取に起因する肝障害が注目を集めている。これらは非アルコール性脂肪肝と総称され,肝臓の炎症性変化や線維化の進行した病態は非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis ; NASH)と称されている。実際にNASH 患者から採取した唾液を分析すると,主要な歯周病原性細菌のうちPorphyromonas gingivalis が高頻度で検出されることが明らかになった。そこで,高脂肪食を摂取させるNASH モデルマウスを用いて,P. gingivalis のうち歯周病原性の強いOMZ314株を頸静脈より投与した。すると,通常48 週間程度経過して認められる脂肪肝炎の症状が,8 週程度の短期間で生じることが示された。さらに,齲蝕の主要な病原性細菌であるStreptococcus mutans のうち血液分離されたTW871 株を頸静脈に投与したところ,8 週後にはNASH 特有の所見を呈した。その後の様々な解析から,TW871 株を投与することで,酸化ストレスに関連するサイトカインであるメタロチオネインの過剰産生を引き起こすことが分かった。また,炎症性サイトカインであるインターフェロン・ガンマや各種ケモカインの発現上昇を引き起こすことも確認され,口腔細菌によるNASH 悪化メカニズムの一端が明らかになった。

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非アルコール性脂肪肝炎悪化に対して口腔細菌の及ぼす影響 https://t.co/NCvRXDKvz5

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