6 0 0 0 OA 家族の個人化

著者
山田 昌弘
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.341-354, 2004-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
37
被引用文献数
13 13 24

近代社会においては, 家族は国家と並んでその関係が選択不可能, 解消困難という意味で, 個人化されざる領域と考えられてきた.この2つの領域に, 選択可能性の拡大という意味で個人化が浸透していることが, 現代社会の特徴である.家族の個人化が日本の家族社会学者の間で考察され始めるのは, 1980年代である.それは, 家族の多様化という形で, 家族規範の弱体化が進んだことの反映である.考察に当たって, 2つの質的に異なった家族の個人化を区別することが重要である.1つは, 家族の枠内での個人化であり, 家族の選択不可能, 解消困難性を保持したまま, 家族形態や家族行動の選択肢の可能性が高まるプロセスである.それに対して, ベックやバウマンが近年強調しているのは, 家族関係自体を選択したり, 解消したりする自由が拡大するプロセスであり, これを家族の本質的個人化と呼びたい.個人の側から見れば, 家族の範囲を決定する自由の拡大となる.家族の枠内での個人化は, 家族成員間の利害の対立が不可避的に生じさせる.その結果, 家族内部での勢力の強い成員の決定が優先される傾向が強まる.家族の本質的個人化が進行すれば, 次の帰結が導かれる. (1) 家族が不安定化し, リスクを伴ったものとなる. (2) 階層化が進展し, 社会の中で魅力や経済力によって選択の実現率に差が出る. (3) ナルシシズムが広がり, 家族が道具化する. (4) 幻想の中に家族が追いやられる.

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門外漢なので詳しいことはわかりませんが、漠然と抱えている不安や、社会生活での違和感がスッキリした気がしました。 「家族の個人化」 https://t.co/SMQJW7R4ba
https://t.co/XMa7SXPmQs 「④幻想の中に家族が追いやられる」、なんかエモい(?
memo 山田昌弘「家族の個人化」 2004 https://t.co/tkkQTwHYGX
やまだ2004 / “_pdf” http://t.co/9Fekowy9

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