著者
米澤 旦
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.28-41, 2016-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
26

本論の目的は,サードセクター研究におけるサードセクター組織と規範性の関係性をたどることである.サードセクター研究は規範的なものとなりがちである.これは,サードセクター組織自体が何らかの規範的目的を追求し,研究もサードセクターの規範的立場に自らを重ねあわせてきたためである.多くの場合,サードセクターが体現する規範性は一元的なものと想定された.しかし,セクター境界の曖昧化とセクター内部の多元化により,そのような前提の揺らぎは顕在化している.本論では,サードセクター研究の変化をたどることで,柔軟な組織形態と規範性を分析する枠組みを検討する.本論の主張は,サードセクター研究における組織形態と規範性の結びつきは3 つのステージに分けることができるというものである.1990 年代までの研究は,セクター本質主義を前提とする考え方(本論では「第一ステージ」と呼ぶ),原理の媒介をサードセクターに見出す考え方(本論では「第二ステージ」と呼ぶ)に区分でき,さらに,近年では,制度ロジックという枠組みを用いた,サードセクター研究の「第三ステージ」とも呼べるような研究がみられている.組織形態と規範性を柔軟に分析することに,「第三ステージ」の研究の意義がある.これらの検討は,社会給付のサービス化が進行するなかで,福祉にかかわる組織のより良き理解に貢献するものであり,福祉社会学の規範的課題を解くうえでも重要な作業である.

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社会福祉に力点を置いた欧州系のサードセクター研究では、制度ロジック研究があるみたい。 https://t.co/DSnE1SlYIM

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