著者
山岸 裕美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.219, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 武芸を業とする職能集団の武士にとって、直垂は歴史を通じて用いられてきた衣服である。鎌倉時代の武士は当時、これを平服から礼服にいたるまで幅広く用いていた。そして中でも白の直垂は、北条氏執権体制下の武家社会においては何らかの特別な衣服となっていたと思われる。そこで、これがどのような意味合いをもって装われたのかについて検討し、考察を行った。方法 鎌倉時代の東国社会の様子について知るための一等史料である「吾妻鏡」をはじめ、当時の記録や物語類などを手がかりとして検討した。さらに、公家社会と武家社会が政治と文化の両面において複雑な駆け引きを行っていた時代背景を考え、武家の特性及び独自の主張についても考慮した。結果 白の衣服が浄衣と照応する形で神事などの場で用いられたことは、武家の白直垂についても同様である。しかし、当時の武家の白直垂にはそれとは異なる別の意味もあることがわかった。つまり、威儀を正した装束として儀礼などの晴の場で着用されるとともに、独自の儀でも盛んに用いられて、武家としての存在を示すものとなった。そして、やがては上級武士の好む装いの一つともなったと考えられる。

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