著者
人見 英里 廣島 愛
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.196, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】グルタチオンs-トランスフェラーゼ(GST)は第二相解毒代謝酵素の一種であり、生体の解毒代謝において重要な役割を果たしている。このGSTを誘導する食品としては、ブロッコリーを代表とするアブラナ科野菜が知られているが、調理操作を行なった場合の野菜の解毒酵素誘導能については未知の部分が多い。そこで、本研究では、日本でよく食されるアブラナ科野菜であるブロッコリーとダイコンについて、加熱あるいはすりおろしを行なった場合のGST誘導能について検討を行った。 【方法】試料として、山口市内の量販店で購入した青首ダイコン(山口県産)、辛味ダイコン(群馬県産)、ブロッコリー(広島県産、福島県産)を用いた。ブロッコリーでは、茹で加熱あるいは電子レンジ加熱を行なった後、エタノール抽出を行なった。青首ダイコンでは、茹で加熱、電子レンジ加熱、すりおろしを、辛味ダイコンではすりおろしを行ない、それぞれの搾汁液を試料液とした。これらの試料液をラット肝臓由来RL34細胞に投与し、24時間培養後の細胞のGST活性をCDNB法にて測定した。 【結果】非加熱の場合、青首ダイコン、辛味ダイコンの搾り汁には高いGST誘導活性が認められた。ダイコンを茹で加熱した場合、短時間の加熱によって活性は失われたが、電子レンジによる短時間の加熱では、活性は保たれた。ブロッコリーでは非加熱では活性はみられなかったが、短時間の茹で加熱、電子レンジ加熱の後には弱いながら誘導活性が認められた。ダイコンをすりおろした場合、60分放置した場合にも活性は保たれた。 以上のことから、解毒酵素誘導能を最大限発揮させるためにはそれぞれの野菜に応じた調理方法を選択することが望まれる。
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.274, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】冷蔵庫は毎日の食事で私たちが口にするものを保存している場所であるため、衛生には特に注意を払い清潔に保っておきたい。しかし、台所のシンクやガスコンロ周りなど汚れが目につきやすい箇所は掃除の頻度が高いが、冷蔵庫は温度が低く菌に汚染されにくいというイメージがあり、定期的に掃除を行う家庭は少ないのではないのかと考えられる。そこで一般家庭の冷蔵庫の細菌汚染状況及び掃除頻度を調査した。【方法】調査は本学学生86名を対象とし、2008年6月17日から7月16日に実施した。細菌検査は、生菌数用・標準寒天と大腸菌・大腸菌群用XM-G寒天(フードスタンプ「ニッスイ」)を使用し、冷蔵庫の棚とドアポケットの2ヶ所を検査した。冷蔵庫の掃除頻度は、自記式アンケートで調査を行った。【結果・考察】調査した全ての冷蔵庫から一般生菌が検出された。また、4割を超える冷蔵庫から大腸菌群が検出された。掃除頻度の低い冷蔵庫ほど検出される菌数は多い傾向にあったが、各冷蔵庫でばらつきがみられた。庫内の汚染状況は、ドアポケットより棚の方が菌の検出率が高かった。これは、棚に置いている他の食材からの汚染が原因のひとつと考えられた。冷蔵庫の掃除は、「年に1回程度している冷蔵庫」では年末やお盆前など決まった時期に行っていることが分かった。しかし、「年に2~3回している冷蔵庫」は『気が向いた時』や『汚れた時』など、不定期に掃除を行っているケースが多く、汚れた部分のみを掃除している可能性が考えられた。今回の結果より、各家庭の掃除頻度は予想以上に低く、また冷蔵庫は多くの細菌に汚染されていることが明らかとなった。
著者
小柴 朋子 新藤 麻奈美 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.42, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】服装において肌の露出が、着用者あるいはその着用者を見る人の心理に及ぼす影響は大きい。肌の露出に対する女子大学生の意識について調査し、肌の露出に対する注目度と露出部位あるいは露出程度がストレス程度に及ぼす影響について評価した。 【方法】1)肌の露出に対するアンケート調査:18~22才の女子大学生320名を対象とし、人前で肌を露出できる限界、露出への関心度などについて調査した。2)視線の観察:被験者は21~22才の女子大学生5名。中等温環境下の室内で、腕・脚・胸・腹の露出程度の異なる着衣条件で、5分間被験者は鏡に映る自分を凝視。鏡の横で観察者が椅座。アイマークレコーダ((株)nac)で視点を測定した。3)心拍変動評価:21~22才の健康な女子3名を対象とし、2)と同様な測定条件・着衣条件下で心電図を記録後、BIMUTAS2(キッセイコムテック(株))でR-R間隔変動を周波数解析した。4)肌露出時のストレス測定:唾液中αアミラーゼ活性をストレス指標とし、各着衣実験終了直後に唾液を採取、α―AMY(ヤマハ発動機(株))を用いて測定した。 【結果】アンケートの結果、肌を露出できる限界は胸のふくらみが始まる程度、背中は肩甲骨上端、腕全体、大腿部中間、腹部は露出できないという回答が多いことが示された。視点の滞留時間については、露出者は、胸と腹の露出部分への注視は短く、腕と脚の露出部分へは注視時間が長かった。第3者の視線も同様な結果を示した。心拍変動解析の結果では、露出したくない部位を露出した場合、副交感神経活動が小となる傾向が見られ、脚部では露出の影響が少なく、腹部では大きかった。唾液アミラーゼ活性からは、腹の露出が胸や腕よりもストレスが大きいことが推測された。
著者
勝川 路子 中田 理恵子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.18, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 機能性食品成分による生活習慣病予防の分子機構解明を目指して、我々はプロスタグランジン産生の律速酵素である誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制、そしてその発現抑制に関与する核内受容体PPAR活性化を指標にした研究を続けている。今までに赤ワインに含まれるポリフェノール・レスベラトロールがPPARα活性化を介して脳保護効果を持つことを報告してきた。また、種々の植物油の機能性を評価したところ、タイム油等の精油においてCOX-2の発現抑制が見出され(1)、さらにCOX-2発現抑制およびPPAR活性化の効果をもつタイム油の成分を同定した。今回は、タイム油以外の精油およびその成分について、両効果を検討したので報告する。 方法 COX-2発現抑制は、ウシ血管内皮細胞にCOX-2レポーターベクター・PPARγ発現ベクターを共導入した後、種々の精油及びその成分を添加し、LPS刺激によるCOX-2発現誘導に対する抑制効果を測定した。3種類のPPAR(α, β/δ, γ)の活性化は、同細胞にPPREレポーターベクターとそれぞれのPPAR発現ベクターを共導入して測定した。 結果 バラ油においてCOX-2発現抑制、PPARα,γの活性化が認められ、その効果にはバラ油の2種類の成分が主に関与することを見出した。 (1) 堀田真理子、中田理恵子、井上裕康 日本家政学会誌 59, 373-378 (2008)
著者
三神 彩子 三浦 理絵 喜多 記子 佐藤 久美 長尾 慶子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.174, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】家庭部門でのエネルギー使用量増加が近年顕著であり,資源の有効活用および地球温暖化防止の観点から省エネルギー(以下省エネと表記)対策が重要課題となっている。 食生活分野での調理に適した道具の選択はエコ・クッキングの観点から重要な因子である。本研究では,幅広い料理法に対応できる中華鍋(鉄)の特性を活用し,省エネ,CO2削減効果をはかることを目的に,「炒める」「焼く」「揚げる」「蒸す」「煮る」の5操作法別に代表的な調理を実施し,他の鍋類との比較・検討をおこなった。 【方法】ガス積算流量計,熱電対温度計,温度計測記録器を使用し,加熱操作法別に,調理道具(中華鍋,西洋蒸し器,蒸籠,フライパン,揚げ鍋,グリル)ごとの調理時のガス・水使用量, 試料内部温度,仕上がりまでの加熱時間を測定し,さらにCO2排出量に換算した。 【結果】中華鍋は,その形状から火力を効率的に活用でき,熱伝導率が高く,「炒める」では,中華鍋の方がフライパン(鉄)と比較し約26%,フライパン(テフロン)とでは約56%の省エネ効果があった。「焼く」は,中華鍋の方がフライパン(鉄)と比べ約13%,フライパン(テフロン)とでは約47%の省エネ効果があった。「揚げる」は,グリルでも省エネ効果が認められたが,仕上がり(外観)を考慮すると中華鍋が適しており,揚げ鍋と比較し約15%の省エネ効果があった。「蒸す」では,中華鍋で蒸籠を使った場合と,西洋蒸し器使用とで比較すると,約19%の省エネ効果があった。「煮る」は,弱火・長時間加熱の煮込料理で中華鍋の省エネ効果はみられなかった。以上5項目中4項目の加熱操作の中華鍋使用の料理で13~56%の省エネ,CO2削減効果が確認できた。
著者
西山 一朗 福田 哲生 末澤 克彦 大田 忠親
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.271, 2009 (Released:2009-09-02)

キウイフルーツ等マタタビ属果実におけるシュウ酸含量 ○西山 一朗*,福田 哲生**,末澤 克彦**,大田 忠親* (*駒沢女短大,**香川農試府中分場) 目 的 キウイフルーツ等マタタビ属果実には,シュウ酸カルシウムの針状結晶束が含まれており,これが口腔刺激性(イガイガ感)の主原因とされている.本研究ではマタタビ属果実におけるシュウ酸カルシウム結晶束の局在を観察し,果実内シュウ酸濃度の品種間差異に関する検討を行った. 方 法 ニュージーランド系キウイフルーツ(Actinidia deliciosa)6種,中国系キウイフルーツ(A. chinensis)9種,シマサルナシ(A. rufa)2種,サルナシ(A. arguta)7種ならびに種間雑種2種の適熟期果実を実験に供した.シュウ酸カルシウム結晶束の観察は,果実赤道部の横断切片(約1 mm厚)に5% NaOH処理を施し,実体顕微鏡観察により行った.シュウ酸濃度は,可食部のピューレーを塩酸処理して得られた抽出液を試料とし,ODSカラムを用いたHPLC法により定量した.一部では,表皮の有無によるシュウ酸濃度の違いについても検討を行った. 結 果 実験に用いたすべての品種・系統の果実において,種子周辺の内果皮を中心としてシュウ酸カルシウム結晶束の分布が観察された.ニュージーランド系ならびに中国系キウイフルーツ果実のシュウ酸濃度は,それぞれ17.0~39.5 mg/100gおよび18.4~31.3 mg/100gの範囲にあり,両者間での顕著な違いは認められなかった.またシマサルナシおよびサルナシでは,それぞれ44.8~101.5 mg/100gならびに26.0~50.2 mg/100gの範囲にあり,キウイフルーツと比較してシュウ酸濃度が高値を示す傾向が認められた.サルナシ果実のシュウ酸濃度については,表皮の有無による有意な差異は認められなかった.
著者
片山 倫子 神田 英里香 渡辺 明香 藤巻 杏里
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.304, 2009 (Released:2009-09-02)

目的近年の洗濯機の動向としては、従来からの渦巻き式からドラム式への転換が進んでいる。日本では店頭に並んでいる洗濯機の性能を評価したラベル等の表示に関する法的な規制が確立されていないため、消費者は洗濯機の特徴をよく知らずに購入しているのが実情である。本研究では市販の全自動電気洗濯機について洗浄実験を行い各洗濯機の洗浄性能の比較検討を試みた。 方法被洗物としてはJISC9606電気洗濯機で規定されている模擬洗濯物(シーツ1枚・シャツ1枚・タオル4枚・ハンカチ2枚)の計8枚に補助布を加え2kgに調整した物を用いた。この被洗物の特定の部位に洗浄力評価用の湿式人工汚染布の一辺を縫いつける方法で取り付けた後に各機種の標準コース(水温40度)で洗浄した。洗浄中に使用した洗濯用水、消費電力量、所要時間を測定した。洗浄力の推定は模擬洗濯物に添付した湿式人工汚染布の洗浄前後のK/S値の差によった。 結果全汚れ除去量に見合うK/S値をみるといずれの機種についてもほぼ等しく最終的な洗浄力はほぼ同程度であるとみなせるが、単位水量あたり・単位時間あたり・単位消費電力量あたりの汚れ除去量を調べてみると機種間の相違が大きかった。一般に渦巻き式等のたて型洗濯機は同一コースでの繰り返し洗濯時の再現性が良かったがドラム式等のよこ型洗濯機は繰り返し時の再現性が悪い傾向が見られた。
著者
小原 奈津子 宮島 美穂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.123, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 ベトナムの伝統衣服であるアオザイは、長袖でゆとりが少なく体にフィットした形で腰から裾へ長いスリットが入った上衣と、幅広のパンツの組み合わせからなる。現在はポリエステル製のアオザイがよく見かけられるが、高温多湿な気候下でスリムなデザインの衣服素材として吸湿性の低いポリエステルが予想に反して定着していることから、ポリエステルとスリットがアオザイの衣服内気候に及ぼす影響を検討した。方法 試料服としてスリットのあるアオザイとスリットをふさいだアオザイを、厚さと織密度がほぼ等しいポリエステルと綿で製作した。30℃、80%R.H.の環境下で、5人の被験者が椅座安静(15分)、階段昇降運動(15分)、立位安静(30分)のプログラムで運動した。その間、8か所の皮膚温の変化、4か所の衣服内温湿度の変化を測定し、温度、快適、べたつきなどの官能評価を行った。これらの実験は各2回行った。さらに実験前後の衣服とタオルの重量差から発汗量を求めた。結果 皮膚温、衣服内温湿度および官能評価では被験者に共通した運動による変化がみられたが、分散分析の結果、素材とスリットはこれらの衣服内気候に影響する要因としては有意ではなかった。他方、汗の量は、スリットのない綿素材>スリットのないポリエステル素材>スリットのあるポリエステル素材>スリットのある綿素材の順となり、綿素材のアオザイではスリットの有無が汗の量の要因として有意であり、一方ポリエステルではスリットの有無は要因として有意でなかった。これらの結果から、本実験のような条件下で運動した場合の衣服内気候は、素材の吸湿性のみならず、吸湿による吸着熱の発生、素材の通気性、吸水性などに影響を受けることが明らかとなった。
著者
阿部 恵利子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.58, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 近年、医学や発達心理学の分野において乳幼児期の視覚の発達の経緯が明らかにされつつある。これによると、色彩感覚や空間認知能力は乳幼児期の視覚体験によって獲得され、それ以後は訓練しても習得は難しいとされている。しかし、こうした視覚に関する知識を、乳児をもつ母親は認識しているのであろうか。そこで本研究は、乳児をもつ母親の空間認知に関する意識について調査・分析を行い、子どもの色彩感覚や空間認知の発達を促すための基礎的研究とすることを目的とする。 方法 子育てサークルの母親、20代16名、30代14名、計30名を対象にアンケート調査を行った。調査対象者の平均年齢は29.6歳である。 結果 月齢別の視力に関するアンケート調査では、1ヶ月の赤ちゃんが明るい色彩に反応することや、4ヶ月の赤ちゃんが目で物を追うことに対する母親の認知度は高いが、具体的な視力については認知されていないことが確認された。赤ちゃんの視覚については70.0%の母親が「関心がある」と回答しているが、空間認知や色彩感覚の発達を理由とする回答は得られなかった。また、乳児は黒・白・赤などの極端な配色や図柄に反応を示すことを認知している母親は少数であり、多数の母親が赤・青・黄の三原色を使用している玩具を「良い」と認識している傾向が示された。視覚と聴覚の発達に関する工夫をしているか否か、の質問については、視覚では66.7%、聴覚では52.3%の母親が「工夫していない」と回答している。このことは、住まいの色彩に関する質問項目において、母親の好みが優先されており、乳児の発達が考慮されていない現状と一致する。 乳児をもつ母親は、視覚に関心はあるものの、視覚に関する具体的な発達については認知しておらず、空間認知や色彩感覚の発達を促す意識は低い傾向が確認された。
著者
新海 シズ 竹山 恵美子 福島 正子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.24, 2009 (Released:2009-09-02)

[目的]市田柿は長野県飯田・下伊那地方に多く見られる在来の渋柿であり,果肉成分や脱渋機構は明らかにされている.一方,柿の葉はラジカル消去作用,アレルギー抑制作用などが明らかにされているが市田柿の葉においての報告はほとんどみられない.そこで,市田柿の葉の有用性を探るために抗酸化力および抗菌効果について検討した. [方法] 試料は,飯田女子短期大学構内の市田柿の葉を5月から9月にかけて採取し,蒸留水で洗浄後凍結乾燥した.その乾燥葉に100倍量の沸騰蒸留水を加え5分抽出後,No.2のろ紙で濾過し抗酸化試験に用いた.抗菌試験は7月に採取した葉を用いて,抽出時間10分および20分で行った.抗酸化力は抗酸化能測定キットを用い,発生したCu+をマイクロプレートリーダー(490nm)で測定した.抗菌試験は Escherichia coli および Staphylococcus aureus 株を用い,カップ法で行った.また,試料に含まれるポリフェノール含量はFolin-Denis法で定量した. [結果] 市田柿の葉の熱水抽出物の抗酸化力は,5・6月に採取した葉がおよそ1,300μmol/L( Cu還元力)と高く,8・9月に採取した葉は814,853μmol/Lと低下し5・6月の葉の6割程度であった.また,抗菌試験においてはStaphylococcus aureusに対して抗菌効果が見られたが,Escherichia coli に対しての抗菌効果はあまりみられなかった.ポリフェノール含量は,柿の葉抽出時間20分のものが2,016μg/mlであり10分のものより多かった.
著者
内村 理奈
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.214, 2009 (Released:2009-09-02)

17世紀以来フランスでは清潔(propreté)であるためには白いリネン類が不可欠であるとされてきた。当時の礼儀作法書がそれを推進したからである。当時のパリの水は汚染されており、水で身体を清潔な状態にすることは不可能であったため、白いリネンの下着類をたくさん所有し、それを着替えることで、身体の衛生状態が保たれると考えられていた。白いリネン類によって実現された当時の清潔観については、清潔と衛生観念の歴史の中ですでに論じられてきている。18世紀まで続く高価なレースを含む白い下着類の大流行は、以上のような社会的背景から生まれてきたと言ってよい。 たとえば、当時の白いリネンの中で最高級のオランダ亜麻布は、良質な軟水に恵まれ、最も高度な漂白技法をもっていたオランダで漂白された布であった。当時の白い下着類の流行を下支えした漂白屋(blanchisserie de toile)の技法について、ディドロとダランベールの『百科全書』とジョベールの『職業技術辞典』を手がかりに明らかにする。 漂白技法は地方によって異なり、アイルランド方式、オランダ方式、フランドル方式などがあった。『百科全書』に記されているのは、パリ北部のサンリスに設立された漂白屋の工程である。これによると、草地に面した川沿いに建てられた5棟の異なる工房、つまり、水車小屋、洗濯場(ブウリー)、石鹸でこすり洗いする工房(フロットワール)、牛乳で漂白する工房(レトリー)、仕上げ工房(プロワリー)、そして草地において、順番に異なる作業が、異なる職人の手によって長い時間を要して行なわれた。このようにして作られた白い布は、リネン屋(lingère)に卸された後に服飾品に加工され販売されたのである。
著者
大野 智子 寺井 仁 徳永 弘子 立山 和美 笠松 千夏 武川 直樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.103, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 大皿,銘銘皿など,食事の提供形態は,複数人で食事を共にするときのコミュニケーションに影響すると考えられる.共食場面において,共有された「大皿」がコミュニケーションの質に与える効果について「聞き手の応答」の形態に着目し検討を行った. 方法 分析対象は,3人グループでの共食中の映像である.実験では,「世代」として「高校生」と「主婦」,「食事形態」として銘々の皿に食事が配膳される「銘々皿」と,大皿を囲んで自由に取り分ける「大皿」の各2水準,計4条件が設定された.実験時間は30分間である. 分析では,会話中の聞き手の応答として,他者の発話を受ける姿勢が弱い「うなずき」,他者の発話を受ける姿勢が強い「あいづち」に注目した.「うなずき」は頭部の上下運動のみによる応答で,「あいづち」は“うん”などの言語行動を伴う応答である.また聞き手が話し手に応答した際の,両者の視線を合わせて分析することにより,コミュニケーションの質について総合的な分析を行った. 結果 高校生と主婦の両世代とも,大皿において「聞き手の応答回数」が多い結果となり,大皿が聞き手の応答を促進している可能性が示された.応答の形態に着目すると,大皿では銘々皿に比べ「あいづち」が多く,積極的な会話の姿勢が形成されていたことが示された.また,応答発生時の話者と聞き手の視線は,銘々皿では自分の食べ物に集中している一方,大皿では各所に配られていたことが確認された. 以上の結果から,大皿という共有空間が中心に存在することにより,食べるという行為の過程において視線配布の広がりを生み,互いに発話を受ける姿勢を強める結果となり「活発なコミュニケーションの場」が作り出されていたことが示唆される.
著者
山岸 裕美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.219, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 武芸を業とする職能集団の武士にとって、直垂は歴史を通じて用いられてきた衣服である。鎌倉時代の武士は当時、これを平服から礼服にいたるまで幅広く用いていた。そして中でも白の直垂は、北条氏執権体制下の武家社会においては何らかの特別な衣服となっていたと思われる。そこで、これがどのような意味合いをもって装われたのかについて検討し、考察を行った。方法 鎌倉時代の東国社会の様子について知るための一等史料である「吾妻鏡」をはじめ、当時の記録や物語類などを手がかりとして検討した。さらに、公家社会と武家社会が政治と文化の両面において複雑な駆け引きを行っていた時代背景を考え、武家の特性及び独自の主張についても考慮した。結果 白の衣服が浄衣と照応する形で神事などの場で用いられたことは、武家の白直垂についても同様である。しかし、当時の武家の白直垂にはそれとは異なる別の意味もあることがわかった。つまり、威儀を正した装束として儀礼などの晴の場で着用されるとともに、独自の儀でも盛んに用いられて、武家としての存在を示すものとなった。そして、やがては上級武士の好む装いの一つともなったと考えられる。