- 著者
-
吉川 泰弘
- 出版者
- JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
- 雑誌
- 結核 (ISSN:00229776)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.10, pp.613-621, 2006-10-15 (Released:2011-05-24)
:主な人獣共通感染症は700種類以上を数え,中でも結核は重要であり,結核を含む抗酸菌症は霊長類や反笏動物に多い。結核菌の自然宿主はヒトであるが,牛型結核菌や非結核性抗酸菌なども含めて多くの動物は抗酸菌に感受性が高い。また,最近のわが国のペットブームによりヒトと動物の間での再帰感染例が増加し,動物園動物における抗酸菌症の発生も見られている。動物の国際取引も増加しており,動物由来の感染症や食品に関する国際基準は1927年に設立された国際獣疫事務局(OIE)が決定している。加盟国はその基準に拘束されるが,わが国は比較的良好にコントロールされており,乳牛での牛型結核の発生はほとんどなく,実験用の輸入サルでも人型結核の報告は少ない。しかし,結核予防法が感染症法に統合される予想の下,動物における抗酸菌症の届け出や非汚染証明書の発行などの範囲等は検討すべき課題であり,獣医のみならず医師もこの問題に関心を持つ必要がある。