著者
宮本 健市郎
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.95, pp.38-43, 2007-05-10 (Released:2009-09-04)
参考文献数
8

現代の日本において教育哲学が果たすべき役割を考えると、まず、教師が教育目的に関する議論ができる状況を作り出すことが必要である。あらゆる教育実践には、名目上にすぎないものであっても、かならず教育目的が存在している。だが多くの場合、教師はそれを自覚しないか、自覚できない状況に陥っている。この無自覚の教育実践を自覚化し、批判することが、教育哲学の役割である。だが、理念派のように、教育目的の自覚・批判を教師の教養に委ねるならば、教育哲学の課題は、結局は教師の人格の問題に帰着する。教育の目的についての考察が必要であることを強調すればするほど、理念派の立てた教育目的が、ひとりひとりの教師の教育実践から乖離していく。このときに必要なのは、教室での自分自身の教育実践から出発する現場派の教育哲学である。それは大学院の研究者によって与えられるものではなくて、教師が自分自身の教育実践のなかでつくりあげるものである。

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