著者
佐藤 力夫
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.125-131, 1977-12-01 (Released:2017-08-10)
被引用文献数
1

カバシャク亜科(Archiearinae)は世界に2属7種しか知られていない小さいグループで(井上,1961),わが国にはArchiearis属の2種が分布している.いずれもヨーロッパとの共通種で,A. parthenias Linnaesカバシャクは,北海道と本州中部山地に分布し,それぞれsubsp. bella Inoue, subsp. elegans Inoueと別亜種にされている.またA. notha Hubnerクロフカバシャクは,1955年に岩手県盛岡市繋で1♂が発見されokanoi Inoueなる亜種名がつけられた.その後1961年から1963年にかけて岩手県紫波郡紫波町新山で再発見,一時は棲息地の環境の変化によって絶滅の危険があったが,幸にも1975年以降再び同地での棲息が確認されている(斉藤・片山,1976;佐竹・斉藤,1977).一方幼虫に関しては,中村(1975)がpartheniasの記載をおこない,斉藤・片山(1976)はnothaの採卵に成功し幼虫の飼育記録を報告している.しかし中村の記載には後述するように筆者の観察と一致しない点があり,斉藤・片山の記録には幼虫の形態(chaetotaxyなど)に関する記載が含まれていない.筆者は佐竹邦彦氏の御好意により,同氏が1976年4月25日に上記の紫波町新山で採集されたnothaの♀から得た卵をいただき,孵化幼虫にヤマナラシを与えて飼育することができた.また1977年7月3日長野県湯の丸高原においてシラカバを摂食中のpartheniasの中〜終齢幼虫を若干採集するとともに,杉繁郎氏からは同氏が1972年7月1日に同所で得た終齢幼虫1頭(液浸標本)の恵与を受けた.本報ではこれらの材料に基づいて両種の幼虫について若干の知見を述べたい.

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