著者
一戸 正勝
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.40, pp.11-14, 1994-12-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
14

穀類に着生してカビ毒汚染をもたらす菌類にはムギ類,トウモロコシの赤かび病にみられるような収穫前の圃場における植物病原菌に区分されるものと,米粒の収穫後の貯蔵,輸送時に発生する病変米の原因になるような貯蔵性菌類に区分されるものとがある.圃場におけるイネ病原菌がカビ毒汚染に関与したと想定される例は1950年代に発生した赤かび被害米粒の摂取による食中毒事件以外にはない.食品衛生学の歴史のうえで米(米粒)に着生するカビが問題視されたことは第二次世界大戦以前からあったが,社会問題にまでなり,その後の我が国のカビ毒研究の発端となったのは貯蔵性菌類による黄変米事件である. 1993年の東日本を中心とする異常気象によるイネの大冷害は外国産米の緊急輸入という事態をもたらし,その安全性をめぐって新聞,テレビをおおいに賑わしたのは黄変米以来のことである. そこで,これまでの我が国における米のカビに関する研究の歴史を概観することにより,それらの研究成果から学ぶことの多いことを期待すると共に,現在の輸入米,国産米のカビおよびカビ毒の問題にいかに対処すべきか考えたい.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト