著者
山田 健
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_292-1_315, 2020 (Released:2021-06-16)
参考文献数
71

本論文は、戦後日本の中央-地方関係という行政学の伝統的な主題について、地方行政において重要な役割を果たしていながらその実態を十分に把握されていなかった中央省庁出先機関に焦点を当て、その再考を試みたものである。出先機関の活動について、行政学の通説は本省の方針に接近した活動を見出し、対抗説は地方自治体の方針に接近した活動を見出してきた。しかし、先行研究は、出先機関の活動に本省への接近・地方自治体への接近の二面を見出しうることを説明するに至っていない。すなわち、「なぜ、出先機関はある時に中央省庁本省の方針に接近し、またある時には地方自治体の方針に接近するのか」 という問いが残されていた。これに対して、本論文は、出先機関が制度設計による動機付けを背景として、「中央主導型」 と 「地方後方支援型」 という二つの自律的な行動様式を展開し、地方行政において看過しえない影響力を行使していることを明らかにした。そして、この知見をふまえて、国と地方自治体の単線的な関係として捉えられてきた中央-地方関係について、本省・出先機関・地方自治体の三者による複線的な中央-地方関係として再考しうることを提示した。

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