著者
小山 千登世
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.30-43, 2006-08-10 (Released:2017-08-01)

なぜ先生は「私」に遺書を送ったのか。「私」は手紙の齟齬から、父危篤の時を選んで、「私」に自らの死を告げる遺書を送った先生の仕掛けに気付いていく。それは遺書の読み手たり得ない「私」に「先生」と類似の<罪>(父を裏切る)を体験させることで「私」の成長を促そうとしたものであった。遺書の読み手たるにはそれを体験することが要求された。ここに先生の<血>を浴びせかけられた「私」との対比で、<純白>に保たれた妻への愛を読み取ることが出来るのである。

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