著者
村上 克尚
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.27-36, 2010-11-10 (Released:2017-08-01)

本稿は、竹内好の国民文学論に対する武田泰淳の位置を、『風媒花』の分析を通じて確定する試みである。国民文学論は、朝鮮戦争を糧とした経済成長への抵抗運動として規定できるが、「国民」や「民族」といった概念を用いたことで、新たな抑圧への可能性を残す。これに対して、『風媒花』は、外部・内部に複数的な差異を探し求め、それらを介した緩やかな連帯のあり方を風媒花の形象で示した。それは、文学作品と読者のあり方への深い洞察から生まれたヴィジョンだと考えられる。

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