- 著者
-
井上 史雄
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.165, pp.3-17, 2016 (Released:2018-12-26)
- 参考文献数
- 10
ここでは,オリンピックの言語問題を論じる。経済言語学的観点から2種の資料を提示する。第1として,グーグル検索を利用し,オリンピックと言語への言及の変化を見る。言語の市場価値は,かつては戦争に左右されたが,現代は経済に影響を受ける。オリンピックへの関心は短期間で,言語への関心や習得が長期にわたるのと,タイムスパンが違う。スポーツ大会は言語に限定的な作用しか与えない。 第2として,開催都市の言語景観を考察する。オリンピックはじめスポーツ関係の国際的行事で多言語景観が出現する。しかるに2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは,日英+ピクトグラムを基本にするそうで,公的言語サービスとしては後退を示す。ただ私的企業としては,多言語化によって客を呼び込む可能性があるわけで,ビジネスチャンスととらえることができる。